研究実績の概要 |
本研究は、Sleeping Beautyトランスポゾン肝発がんモデルを用いて、肝がんに対する新規の分子標的治療を開発することを目的とする。Sleeping Beautyトランスポゾンで発がんするとその発がんの要した遺伝子に特徴的な表現型を示す腫瘍が形成される。本研究代表者はこれまでに、マウス肝細胞にて、活性化型AKTと活性化型YAPの組み合わせにより胆管がんが誘導されることを報告した(Yamamoto et al., Am J Pathol 2018)。本年度は、その過程で活性化するシグナルを検討し、そのシグナルを標的とした治療方法の検討を行った。 活性化型AKTと活性化型YAPの組み合わせで誘導されたマウス胆管癌において、活性化しているシグナル経路のスクリーニングを行なった。結果、これまで研究代表者が報告している、Notch経路とMycに加えて、シグナルAが活性化していることが明らかになった。 次に、活性化型AKTと活性化型YAPの組み合わせで誘導したマウス胆管癌より樹立した細胞株を用いて、シグナルAの活性を抑制する薬剤を見つけることを目的に、薬剤スクリーニングを行なった。そうしたところ、薬剤Aが胆管癌細胞株においてシグナルAを抑制することが明らかになった。 実際に、薬剤Aの生体内での効果を検討するために、活性化型AKTと活性化型YAPの組み合わせで胆管癌を誘導したマウスに遺伝子導入3週間後より薬剤Aを投与した。in vivoイメージングで、薬剤A投与により腫瘍の増大に影響なかった。また、屠殺時の肝重量および肝・体重比いずれも薬剤Aの投与で変化なかった。結果、今回の投与量、期間では、薬剤Aの生体内での効果は認められなかった。
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