研究課題/領域番号 |
20K07443
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
山本 雅大 熊本大学, 大学院生命科学研究部(保), 教授 (30431399)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Sleeping Beautyトランスポゾン / RAS / Myc |
研究実績の概要 |
本研究は、マウス肝細胞に生体内で任意の遺伝子を導入し肝がんを誘導することのできるSleeping Beautyトランスポゾンマウス肝発がんモデルを用いて、発癌に要した遺伝子により活性化される分子を標的とした治療法の開発を目的とする。本代表研究者はこれまでに様々な遺伝子の組み合わせをマウス肝細胞に導入し、導入遺伝子の組み合わせに依存した特徴を示す種々のマウス肝腫瘍モデルを報告してきた。その中で、変異型HRASとMycにより誘導された肝腫瘍は、幹細胞や肝芽細胞などと類似した遺伝子発現を示し、未分化な特徴を示すことを見出した。本年度は、このHRAS/Mycモデルにおける薬剤Xの効果を検討した。 HRAS/Mycを肝臓に導入したマウスに対し薬剤Xを投与した実験に関して、肝重量、体重および組織標本を用いた形態的な解析を行なった。腫瘍量を反映する肝/体重比においては、非投与群に比べ投与群で有意な減少は認められなかった。薬剤Xの投与により有意な軽度の体重減少(非投与群: 22.32g±0.40 vs 投与群: 21.35±0.41)が認められたので、肝重量のみで比較してみたが肝重量の減少傾向がみられたものの有意な差はみられなかった(非投与群: 6.88±0.50 vs 投与群: 6.50±1.33)。一方で、組織学的な検討においては、非投与群に比べ投与群の腫瘍細胞は大きい傾向がみられた。実際に、腫瘍サイズを計測し比較したところ、投与群の腫瘍細胞は非投与群より有意に大きかった。 以上の検討の結果、薬剤XはHRAS/Myc腫瘍の腫瘍量に明らかな効果を示さなかったが、腫瘍形態には大きな効果を示すことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
薬剤Xの効果を見つけることができたが、詳細な検討まで行えなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
過去の研究において、正常細胞や腫瘍細胞の幹細胞性と細胞のサイズが小さいこととの関連が指摘されている(Li et al. Semin Cancer Biol 35:191, 2015; Lengefeld et al. Sci Adv 7:eabk071, 2021)。このことを踏まえて今後は、Drug XのHRAS/Myc腫瘍の幹細胞性/肝芽細胞性への影響について検討を加える。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年4月に異動となり、実験のセットアップのため時間が余分にかかったため。 次年度に、薬剤効果のメカニズムの解析を行う。
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