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2021 年度 実施状況報告書

瑞々しさが保たれたナノスーツ法電顕観察によるHE病理標本上腫瘍形態特性の新規同定

研究課題

研究課題/領域番号 20K07445
研究機関浜松医科大学

研究代表者

新村 和也  浜松医科大学, 医学部, 准教授 (40321880)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードナノスーツ法 / 一次繊毛 / 肺腫瘍 / 電界放出型走査電子顕微鏡
研究実績の概要

ナノスーツ法を用いて肺腫瘍における一次繊毛の電子顕微鏡像を取得し、その頻度を明らかにすることに世界で初めて成功したので、その研究について報告する。
肺の悪性腫瘍である腺癌、扁平上皮癌、小細胞癌に対して、繊毛マーカーであるARL13Bに対する抗体を用いた免役組織化学的解析を行った。その結果、腺癌、扁平上皮癌に比べて、小細胞癌において高頻度で一次繊毛が存在することが明らかになった。確証を深めるため、異なる抗ARL13B抗体を用いた免疫組織化学を行うと同様な結果を示した。また、免疫蛍光染色を行うと、肺腫瘍における抗ARL13B抗体免疫蛍光陽性像は、別の繊毛マーカーであるアセチル化αチュブリンに対する抗体での免疫蛍光陽性像と共在した。さらに、浜松医科大学で近年開発されたナノスーツ法を用いて、抗ARL13B抗体を用いた免疫染色標本を塩化金染色した後、電界放出型走査電子顕微鏡で観察した。このBSEモードで抗ARL13B抗体陽性部位が明らかになり、その部位をSEモードで観察することにより、一次繊毛の立体構造写真を得ることに成功した。以上のことから肺悪性腫瘍における一次繊毛の存在はより確実なものであると判断された。この肺悪性腫瘍における一次繊毛は、正常組織における一次繊毛と比べ、長さが有意に長いという性質を示し、また、肺小細胞癌で観察すると、Ki67陽性増殖細胞に一次繊毛が存在することも示された。さらには、リンパ節等への転移箇所において一次繊毛形質が保持されていることも示された。さらなる検討を現在進めている。
また、他の腫瘍において、診断に役立つ電顕所見が、ナノスーツ法を用いて簡便に得られることを示唆するデータを得つつあり、最終年にまとめたいと考えている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究時間を予定どおり確保できており、概ね順調に進展しています。

今後の研究の推進方策

今後も、ナノスーツ法を用い、(A)非腫瘍vs腫瘍、各種腫瘍間、腫瘍幹細胞vs非腫瘍幹細胞での細胞表面・細胞内超微細構造の検討、(B)中心体・一次繊毛の観点からの検討、(C)DNA修復の観点からの検討、の3つの柱を立てて、HE病理標本上の電顕レベルでの今後の医学・医療の発展に役立つ腫瘍形態学的特性を新規に同定することに取り組む。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Diagnosis of Ion-Exchange Resin Depositions in Paraffin Sections Using Corrective Light and Electron Microscopy-NanoSuit Method.2021

    • 著者名/発表者名
      Ooishi M, Yamada S, Itoh T, Meguro S, Yagi H, Kosugi I, Iwashita T, Shinmura K, Misawa K, Hariyama T, Kawasaki H
    • 雑誌名

      Diagnostics (Basel)

      巻: 11 ページ: 1193

    • DOI

      10.3390/diagnostics11071193

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] ナノスーツ技術を応用した光-電子相関顕微鏡(NanoSuit-CLEM)元素分析によるリン酸ランタン沈着の病理診断2022

    • 著者名/発表者名
      丸山保彦、新村和也、河崎秀陽、安田和世、松田昌範、鈴木誠、新井一守
    • 学会等名
      第18回日本消化管学会総会学術集会
  • [学会発表] 基底/筋上皮細胞分化を伴う唾液腺腫瘍におけるprimary ciliaの同定と機能2021

    • 著者名/発表者名
      新村和也、草深公秀、河崎秀陽、加藤寿美、針山孝彦、土屋一夫、川西祐一、船井和仁、三澤清、峯田周幸、椙村春彦
    • 学会等名
      第67回日本病理学会秋期特別総会

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公開日: 2022-12-28  

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