研究課題/領域番号 |
20K07446
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
河本 新平 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (40612081)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 細胞老化 / 皮膚細菌 |
研究実績の概要 |
本研究は、我々が単離した皮膚細菌による皮膚細胞の細胞老化誘導機構を明らかにするとともに、菌体による皮膚腫瘍悪性機構を解明することを目的とする。 本年度は、まず皮膚腫瘍モデルマウスを用いた組織学的解析により、細胞老化が誘導されている細胞種の特定を試みた。その結果、細胞老化のマーカーであるp16INK4aを皮膚腫瘍部における癌化した角化細胞だけでなく、線維芽細胞において発現していることを新たに見出した。次に、線維芽細胞が角化細胞に与える影響を検討する目的で、正常マウスもしくは皮膚腫瘍モデルマウスの非腫瘍部位から単離した線維芽細胞を正常の角化細胞とともに三次元培養したところ、皮膚腫瘍モデルマウスより単離した線維芽細胞が角化細胞の異常増殖を誘導することを明らかにした。従って、皮膚腫瘍モデルマウスの皮膚においては一部の線維芽細胞が細胞老化を誘導し、角化細胞の癌化を促進する機能を有していることが示唆された。さらに、こうした線維芽細胞の変化が皮膚細菌依存的なものであるのかを明らかにするため、培養した皮膚線維芽細胞に、我々が単離した皮膚細菌もしくはその他の様々な菌株の培養上清を添加し、線維芽細胞の遺伝子発現の変化を検討した。その結果、我々の単離した皮膚細菌の培養上清を添加することで、線維芽細胞において老化細胞のマーカーであるp16INK4aや老化細胞が分泌することが知られるマトリックスメタロプロテアーゼやサイトカインの発現が有意に上昇することが明らかとなった。以上の結果から、皮膚細菌が線維芽細胞の細胞老化を誘導することによって、線維芽細胞の機能を変化させ、角化細胞の癌化を促進していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初から計画していたマウスの線維芽細胞と角化細胞を用いた三次元培養系を新たに構築することができ、この培養系を用いて皮膚細菌による線維芽細胞への影響を容易に検討することができるようになった。並行して、皮膚腫瘍モデルマウスを用いることで、皮膚細菌による皮膚腫瘍への影響を検討することができている。
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今後の研究の推進方策 |
現在作成をすすめている細胞特異的に細胞老化が誘導できるマウスの解析をすすめ、線維芽細胞特異的に細胞老化を誘導した際の皮膚腫瘍の病態変化を検討する。また、皮膚細菌の培養上清に皮膚腫瘍悪性化を促進する因子が含まれていることが明らかとなっているので、培養上清のメタボローム解析等を行うことによって候補物質を絞り込み、線維芽細胞の培養系もしくは線維芽細胞と角化細胞の三次元培養系を用いたスクリーニングを行うことによって、皮膚腫瘍悪性化を促進する因子の特定を目指す。単なる培養上清のメタボローム解析および培養系を用いたスクリーニングだけでは、候補物質の絞り込みが難しい可能性もあるので、抽出法の差異によってフラクション化した培養上清を培養系に添加する実験も並行して行い、候補物質の性質を明らかにすることで、スクリーニングを容易に行えるように工夫する。さらに、候補物質の絞り込みがスムーズに進んだ場合には、候補物質を皮膚腫瘍モデルマウスに塗布し、特定した物質が皮膚腫瘍を悪性化させる機能を有しているのか確認する予定である。
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