研究実績の概要 |
報告者らは,Amphoterin-induced gene and open reading frame 2 (Amigo2)分子が肝転移のドライバー分子となることを決定した(Sci Rep 2017).しかし,当該分子はマウス由来の腫瘍細胞を用いていたことから,本年度はヒト由来の腫瘍細胞に外挿できるか否かを検討した.ヒト由来の腫瘍細胞株として,大腸癌細胞株(Caco-2, COLO205, DLD1, HCC2998, LoVo, SW480, WiDr)と,胃癌細胞株(MKN1, MKN7, MKN28, MKN45, MKN74, TMK-1)を用いた.ヒトへの外挿性を評価する指標として,1)Amigo2 mRNA発現,2)ヒト肝類洞内皮細胞との接着性,3)ヌードマウスにおける肝転移形成を設け,これらとの間の相関の有無で決定した.その結果,大腸癌細胞株はAmigo2発現量と肝類洞内皮細胞との接着性に相関係数0.452と正の相関を認めた.また,胃癌細胞株は相関係数0.948と強い正の相関を認めた.Amigo2 高発現で肝類洞内皮細胞との接着性が高い大腸癌細胞(DLD-1)と胃癌細胞(MKN-45)をヌードマウスに脾内接種したところ,両者ともに全例で肝臓内に複数の肝転移を形成した.一方,Amigo2 が低発現であった大腸癌細胞(COLO205)と胃癌細胞(MKN28)は,いずれも殆ど肝臓に生着しなかった.これらの研究成果より,これまでマウス由来の腫瘍細胞で明らかにしてきたAmigo2の肝転移ドライバー分子としての役割は,ヒト由来の腫瘍細胞に外挿できることを明らかにした.現在,Amigo2高発現のヒト由来腫瘍細胞を用いて,当初の計画であるシグナル阻害化合物による肝転移抑制を検討中である.
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