研究課題
報告者らは,Amphoterin-induced gene and open reading frame 2 (AMIGO2)分子が肝転移のドライバー分子となることをマウス由来の線維肉腫細胞を用いて決定した(Sci Rep 2017).加えて,この線維肉腫細胞を用いて低分子阻害化合物の添加によりAMIGO2発現を抑制する10種の化合物を既に同定している.それら化合物の主な標的シグナル経路はVEGFR,JAK,MEK,JNK,COXであることを確認している.昨年度はAMIGO2の肝転移ドライバーとしての機能がヒト由来の癌細胞に外挿できることを示した.本年度は,ヒト癌細胞に10種の化合物を処理してもAMIGO2が抑制されるか,さらに5種のシグナル経路を複合的に抑制すると想定される3種の分子標的薬処理を行ってもAMIGO2発現が抑制されるか否かを検討した.AMIGO2を高発現するヒト癌細胞として大腸癌細胞株(DLD1,COLO205)と胃癌細胞株(MKN45)を選択して実験を実施した.その結果,化合物処理をしたヒト癌細胞のAMIGO2発現は低下した.さらに,3種の分子標的薬処理を行っても癌細胞のAMIGO2発現は低下した.癌細胞のAMIGO2発現と密接に相関する肝血管内皮細胞に対する接着能について検討した.その結果,AMIGO2発現を抑制する3種類の分子標的薬処理を行ったヒト癌細胞ではいずれもヒト肝血管内皮細胞との接着が阻害された.これらの成果より,マウス由来の腫瘍細胞で見出したAMIGO2発現による肝血管内皮細胞への接着機能がヒト癌細胞において外挿されたことより,肝転移ドライバー分子としてのAMIGO2分子の機能は種を越えた普遍的な現象であることが想定された.現在,ヌードマウスによる肝転移抑制評価を検討中である.
2: おおむね順調に進展している
令和3年度の研究実施計画に則った実験をほぼ遂行し,当該研究の主題であるマウス由来の細胞株に見出された現象がヒト由来の細胞株にも種を越えて普遍的に外挿できることを確認した.今後は,マウス個体内における肝転移能にも外挿できることを早急に検証し終え,令和4年度に計画した実施事項を遂行する.
若干の研究実施の遅れはあるものの,当初予定していた主な実証を終えている.令和3年度内に行う動物実験を終了次第,リード化合物の最適化や動物実験でも確認・検証実験に進む.当初の研究実施計画に従い,研究期間内に結論を得ることが可能な状況にあり,着実に遂行する.
当初計画していた研究が年度内に実施できなかったことにより,この解析に必要な消耗品費等の支出が行われずに次年度使用額を生じた.しかし,次年度中には当初計画のとおり実験を継続実施する予定であるため,増額分を含めて使用することになる.
すべて 2021 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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