研究課題/領域番号 |
20K07448
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
中田 知里 大分大学, 医学部, 特任助教 (60379625)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 腎がん / miR-210 (miR-210-3p) |
研究実績の概要 |
これまでに作製したmiR-210Tgマウス(Nakada et al. J Pathol, 2020)において成体での尿細管上皮細胞の増殖について評価するため、シスプラチンによる尿細管傷害について再生過程を観察した。シスプラチン投与後、4日目と7日目について免疫染色によりKi67、CD44の発現を観察したところ、7日目で両者が発現上昇することが確認できた。しかしながらKi67とCD44の陽性率はTgマウスとWTに明らかな差が認められなかった。BUNおよびCREの血液生化学の数値についても、4、7日目とも有意差が認められなかった。ここでTgマウスにおいてmiR-210がSGLT2プロモーターによって誘導されるものであり、分化した上皮細胞に発現されることを考慮すると、障害を受けた直後にmiR-210の発現が低下してしまい、増殖-再分化のステップにおいてWTとの差がなくなってしまった可能性があると考えられた。よって本研究の目的である尿細管上皮細胞の増殖メカニズム解明を目指すにあたり、新たに実験モデルを追加する必要があると考えた。 今回、尿細管上皮細胞の増殖-分化を評価するモデルとして、ゼブラフィッシュを用いることにした。ネフロン構造がヒトとよく似ており、これまでもネフロン発生や腎疾患、腎薬物障害モデルに用いられている。ヒトとゼブラフィッシュでは70%もの遺伝子が保存されているが、miR-210およびその標的遺伝子、さらに上流であるVHL-HIF1経路も保存されている。以上より、miR-210が引き起こす代謝変動(解糖系やグルタミン代謝の亢進)やそれに関する代謝関連遺伝子の変動が尿細管上皮細胞の増殖にどのように関与しているかを、ゼブラフィッシュを用いて解析可能であると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
大学による改修工事に伴い、所属講座が仮設施設へ引っ越した(往路、復路とも年度内に行われ、工期変更もあった)。これにより実験室が閉鎖となり、実験機器が倉庫に保管されるなどして実施可能な実験が制限され、また実験室を含む講座の備品整理、再セットアップのため実験を実施する時間が著しく減った。 今回、尿細管上皮細胞の増殖-分化を評価するモデルとして、ゼブラフィッシュを追加するように計画を変更し、遺伝子改変ゼブラフィッシュの樹立を目指した(参照:研究実績の概要)。現在、VHL-KOおよびdre-mir-210-KOゼブラフィッシュを樹立中である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的である尿細管上皮細胞の増殖メカニズム解明を目指すにあたり、実験モデルを追加する必要があると考え、ゼブラフィッシュを加えた。現在、VHL-KOおよびdre-mir-210-KOの遺伝子改変ゼブラフィッシュを樹立中である。今後、ダブルKOを含めたこれらのゼブラフィッシュにおいて、ネフロンの構造異常の有無、尿細管上皮細胞の増殖について調べる。 また、ゼブラフィッシュは胚にモルフォリノやmRNAを注入することで、目的遺伝子を抑制あるいは過剰発現できる。これにより、miR-210によって変動していたエネルギー代謝関連遺伝子(これまでの研究から抽出済み)を標的し、ゼブラフィッシュの表現型を観察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
大学による改修工事に伴い、所属講座が仮設施設へ引っ越した(往路、復路とも年度内に行われ、工期の変更もあった)。これにより実験室が閉鎖となり、実験機器が倉庫に保管されるなどして実施可能な実験が制限され、また実験室を含む講座の備品整理、再セットアップのため実験を実施する時間が著しく減った。以上により研究の進捗が遅れ、試薬・消耗品の購入を見合わせたため、次年度使用額が生じた。またコロナによる移動制限のため、学会にはオンラインで参加し、旅費を使用しなかった。 2022年2月には再セットアップがほぼ完了した。2022(R4)年度は新たに実験モデルとして追加したゼブラフィッシュの実験系確立と解析を中心に計画に沿って研究を進める。
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