研究課題/領域番号 |
20K07449
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
星野 昭芳 北里大学, 医学部, 助教 (00392382)
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研究分担者 |
村雲 芳樹 北里大学, 医学部, 教授 (40324438)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 免疫チェックポイント阻害剤 / 悪性黒色腫 / 損傷乗り超え DNA複製 |
研究実績の概要 |
初年度は、申請した実験計画に基づき、①悪性黒色腫患者検体を用いた病理組織化学的解析、および②遺伝子改変した悪性黒色腫の培養細胞株を用いた細胞生物学的解析、について研究を実施した。 ①については、悪性黒色腫患者のホルマリン固定・パラフィン包埋病理組織切片を用いて、黒色腫におけるREV7発現強度と腫瘍悪性度との連関について、の臨床病理学的意義を組織学的、免疫組織化学的に検討した。 悪性黒色腫患者の病変部のH.E.染色標本を用い、腫瘍の組織像、分裂像、浸潤形態、病変部の腫瘍厚の各項目について病理組織学的な評価を行った。また免疫組織化学染色を用いて、腫瘍におけるREV7発現の有無およびその染色強度を評価し、Ki-67陽性率による腫瘍の増殖能との比較を行った。結果としては、REV7発現強度が高い悪性黒色腫患者では有意に病変部の腫瘍厚が厚いことが判明し、Rev7発現の強度と病理学的な病期進行分類が有意に相関することが判明した。 ②については、悪性黒色腫細胞株を入手し、CRISPR/Cas9システムを利用してREV7遺伝子をノックダウンさせた細胞株を樹立した。野生株および遺伝子改変細胞株における増殖能・移動能・浸潤能について、それぞれWST-1アッセイ、スクラッチアッセイならびにBoyden chamberを用いた浸潤能評価を実施した。結果として、REV7発現の低下が黒色腫細胞の移動能・浸潤能を低下させることが明らかとなった。 上記①患者データおよび②細胞株の解析結果についての成果を取りまとめて、論文投稿中である。
引き続き、免疫チェックポイント阻害薬の治療効果とREV7発現の臨床病理学的意義の解明について、実験に取り掛かる方針である。阻害薬使用患者のホルマリン固定・パラフィン包埋病理組織切片を順次作成し、解析を実施中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画は、研究実績の概要の欄に記載した通り、概ね順調に進展している。 臨床材料の解析については、予定通り約100症例についてH.E.染色および免疫組織化学染色を実施し、Rev7発現の強度が有意に臨床病期と関連していることを明らかにした。また細胞培養実験に関しても、Rev7遺伝子改変を導入した悪性黒色腫の培養細胞株を樹立した。細胞の増殖能、浸潤能についても予定通り解析を終了し、Rev7の発現消失が有意に増殖および浸潤能を低下させることを示した。これまでの成果は申請書に立案した仮説を証明しており、進捗は順調である。
続いて、免疫チェックポイント阻害薬の治療効果とREV7発現の臨床病理学的意義の解明に着手したところである。阻害薬を使用した患者の治療開始前のホルマリン固定・パラフィン包埋病理組織切片を作成し、免疫組織化学染色を随時実施中である。
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今後の研究の推進方策 |
予定通り、免疫チェックポイント阻害薬を使用した患者の治療開始前の評価を継続する。ただし当院にて阻害薬を使用した症例は、倫理委員会にて承認された解析期間内では、約30症例にとどまり、統計的解析を行う上で必要な約50症例には満たないことが判明した。近年では阻害薬使用症例は増加傾向にあるため、不足分については、再度倫理審査を申請し、解析対象期間を拡大して症例数の確保にあたる方針である。また、治療経過において複数回の生検および手術を実施した症例もあるため、これら症例での追加評価を実施する方針である。 当院のみで必要症例数を確保できない場合には、他施設との共同研究を実施する可能性も考慮する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験は計画通りに概ね順調に推移しており、悪性黒色腫患者検体を用いた病理組織化学的解析、および遺伝子改変した悪性黒色腫の培養細胞株を用いた細胞生物学的解析、については、予定した使用額の範囲内で予定していた解析を終了した。 次いで免疫チェックポイント阻害薬に関連した解析を実施中であるが、解析対象の症例数が、当初計画していた症例数に満たず、現在進行中の解析に出費した費用は、予定より少なくなっている。また新型コロナウィルス感染症が拡大した影響で、学会出張がなくなったため旅費相当分は使用していない。 次年度以降は、解析対象者を拡大する方針である。
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