研究課題
Bcl11bのp.N440K変異タンパク質が野生型Bcl11aに及ぼす影響について検討するため、マウスT前駆細胞株2C2を用いたクロマチン免疫沈降シークエンス解析を行った。2C2細胞にHis、FLAGタグをそれぞれ付加したBcl11b(野生型あるいは変異型)およびBcl11aを過剰発現させ、His、FLAG抗体を用いてクロマチン沈降を行った。次世代シークエンス解析の結果、Bcl11bとBcl11aは多数のDNA結合領域を共有していることが分かった。野生型と変異型Bcl11bにDNA結合領域の優位な差は認められず、このことからp.N440K変異はBcl11bのDNA結合を障害しないことが示唆された。そこで、p.N440K変異によりタンパク質相互作用が変化するのではないかと考え、網羅的タンパク質相互作用解析を行うことにした。Bcl11bとその相互作用分子を共沈降するために、大腸菌由来のタンパク質ビオチン付加酵素birAによる生体内ビオチン標識法を採用した。birAは特異的アミノ酸配列であるAP配列中のリジン残基をビオチン化することができる。従って、AP配列を融合した標的タンパク質はbirAの存在下でビオチン化し、アビジンを用いることで標的タンパク質を効率的に精製することが可能となる。先行研究にて別のBcl11b変異タンパク質で同様の生体内ビオチン標識を行い、良好な結果を得た実績がある。AP融合p.N440K変異Bcl11bを発現するマウスを作製し、現在、birA発現マウスとの交配を進めている。同時に2C2細胞を用いた過剰発現系により、同様にBcl11bの相互作用分子の網羅的解析も進めている。
2: おおむね順調に進展している
p.N440K変異がどのようにBcl11bの機能障害を引き起こすのか、以下3つの可能性について検討を行う研究計画を立てた。①標的DNA領域への結合不全、②標的遺伝子の転写活性の低下、③共分子との相互作用、転写制御複合体の形成の異常。これまでの研究成果では①についてクロマチン免疫沈降法による解析を行った。次に③の仮説を検討するために必要な遺伝子改変マウスを作製し、現在、繁殖を進めている。同時に細胞株を用いた検討も追加で計画し、サンプルの調整まで完了している。
細胞株を用いたBcl11bと相互作用分子の沈降サンプルをLC-MS/MSを用いて解析する。現在、解析前のサンプルの最終調整を行っている。また作製した遺伝子改変マウスも順調に繁殖を進めており、解析に必要な匹数が整い次第、Bcl11bの沈降を行い、LC-MS/MSによる網羅的な相互作用タンパク質の同定を行う予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件)
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