研究課題/領域番号 |
20K07460
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
北島 雅之 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 上級研究員 (00401000)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | アレルギー性皮膚炎 / 化学的刺激 / 物理的刺激 |
研究実績の概要 |
重篤なアレルギー性皮膚炎患者の炎症組織では複数の炎症増悪化経路が存在すると考えられているものの、その詳細なメカニズムは不明である。これまで、ヒトアレルギー性皮膚炎症組織で非常に強い発現がみられるThymic Stromal LymphoPoietin (以下TSLP)が、アレルゲンを用いたアレルギー性皮膚炎マウスモデルの炎症開始、および炎症の増悪化に重要であることを明らかにしてきた。本課題では、このアレルギー性皮膚炎モデルマウスに化学的刺激や物理的刺激を加えることで炎症が増悪化する新規マウスモデルを構築し、その炎症状態の変化を理解することで、重篤なヒトアレルギー性皮膚炎根治治療法のための研究基盤を確立することを目的としている。 本課題を開始した令和2年度はアレルゲンと化学的刺激、アレルゲンと物理的刺激を組み合わせることによって皮膚炎が増悪化するマウスモデルの構築および解析をおこなった。アレルギー性皮膚炎を誘導したマウスに、さらにアレルゲンと組織損傷を引き起こす強い炎症を誘導する化学物質を同時に曝露することで、アレルゲンのみ曝露群と比較して2倍以上も皮膚が肥厚する結果をえた。損傷組織で産生されるIL-33は、ヒトアトピー性皮膚炎症患者の症状と血中濃度が相関することが報告されているが、その役割は未解明であった。そこでIL-33欠損マウスを用いて解析したところ、アレルゲンのみ曝露群では野生型マウスとIL-33欠損マウスの皮膚肥厚に違いは見られなかったが、新規モデルでは化学物質による肥厚の増大がほぼキャンセルされた。一方アレルゲンと物理的刺激によって皮膚炎症が増悪化するモデルはいまだ構築中である。まとめると、本年は化学物質+アレルゲン曝露が皮膚炎症を増悪化する新規皮膚炎モデルを構築し、その炎症増悪化にはIL-33が関与する新規炎症増悪化機構が関わっている可能性をえた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度はアレルゲンと化学的刺激、アレルゲンと物理的刺激によって皮膚炎症が増悪化するマウスモデルの構築および解析をおこなった。アレルギー性皮膚炎を誘導したマウスに、さらにアレルゲンと組織にダメージを与え強い炎症を誘導する化学物質を同時に曝露することで、アレルゲンのみ曝露群と比較し2倍以上も皮膚が肥厚する結果をえた。この新規モデルをIL-33欠損マウスに実施したところ、化学物質による肥厚の増大がキャンセルされたことから、IL-33は、組織ダメージを伴うアレルギー性皮膚炎の増悪化に関与していることを示唆している。一方、アレルゲンと物理的刺激(テープストリッピング法)を施すと、アレルゲン曝露のみと比較して、物理的刺激を加えると皮膚肥厚が増大傾向が得られているものの安定した結果が得られていない。
|
今後の研究の推進方策 |
令和2年度はアレルゲンと化学的刺激、アレルゲンと物理的刺激によって皮膚炎症が増悪化するマウスモデルの構築および解析をおこなった。アレルゲンと化学的刺激を組み合わせたモデルでは、IL-33欠損マウスを使用することにより、当初より期待されていたIL-33依存的な炎症増悪化が示唆された。今後さらにアレルゲンと化学的刺激を組み合わせたモデルの解析(浸潤細胞、組織内サイトカイン量および産生細胞など)を進めるとともに、条件付きIL-33レセプター欠損マウスを用いてIL-33の標的細胞の解析を進める予定である。一方、アレルゲンと物理的刺激を組み合わせたモデルでは、IL-33依存的な炎症反応が安定的に確認できていないため、さらに条件検討を進める予定である。具体的には、効率的な物理刺激(テープストリッピング法)を加えるために、刺激(テープ)の種類や刺激回数や刺激時期等の最適化や、効率的に物理刺激を与えられると考えられる界面活性剤との併用、さらに他のアレルゲンについても検討を進めていく予定である。
|