重篤なアレルギー性皮膚炎患者の炎症組織では複数の炎症増悪化経路が存在すると考えられているものの、その詳細なメカニズムは不明である。本課題では、アレルギー性皮膚炎モデルマウスに化学的刺激や物理的刺激を加えることで炎症が増悪化される新規マウスモデルを構築し、その炎症状態の変化を理解することで、重篤なヒトアレルギー性皮膚炎根治治療法のための研究基盤を確立することを目的としている。 令和4年度はIL-33欠損マウスの原因不明の繁殖不良によるST2(IL-33受容体)欠損マウスへの切り替えや実験試薬のロット変更による実験条件の再検討後に、界面活性剤のみを用いた新規マウスモデルにおいて、アレルゲンの濃度や免疫場所などの変化による野生型マウスとST2欠損マウスの炎症病態の程度を比較検討した。その結果、高濃度のアレルゲンをチャレンジと同じ箇所に免疫し、低濃度アレルゲンでチャレンジすることで、野生型マウスと比べてST2欠損マウスの皮膚肥厚、炎症皮膚組織に浸潤する免疫細胞数(特にCD4T細胞、好酸球)が有意に減少することが観察された。この病態は、アレルゲンとテープストリッピングもしくはアレルゲンと化学物質の曝露による炎症増悪化病態でも同様に観察された。一方アレルゲンのみ曝露群では、これらの群に有意な違いは観察されなかった。さらにCD4特異的ST2欠損マウスを用いた解析を実施したところ、ST2欠損マウスと同様に、皮膚炎症の増悪化が有意に減少することが確認できた。まとめると、令和4年度は、物理刺激、化学物質曝露がアレルギー性皮膚炎を増悪化する新規皮膚炎増悪化モデルを最適化し、皮膚炎症増悪化にはIL-33とCD4T細胞上のST2が関与する新たな皮膚炎症増悪化機構の存在がより強く示唆された。
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