ChIP-seqによるAP2-G標的遺伝子のゲノムワイドな同定を行った。ChIP-seq にはGFP融合AP2-G発現原虫(AP2-Gの発現ピークである赤血球感染後約18時間の原虫)および抗GFP抗体を用いた。ChIP-seqは独立して2回実施し再現性を得ることができた。これにより1000以上のAP2-G binding site、660個以上のAP2-G標的遺伝子を同定した。AP2-Gの結合配列を解明する為に、これら標的遺伝子の上流域の配列解析を行った。その結果、AP2-Gが特異的に結合する6塩基配列を同定した。 さらにAP2-G標的遺伝子に関し、それぞれノックアウト原虫およびGFP融合原虫を作成し、その表現型を解析しガメトサイト形成への影響を評価した。その結果AP2-G標的遺伝子の中から新規の雌ガメトサイト特異的転写因子の候補遺伝子AP2-FG2を見出した。この遺伝子のノックアウト原虫はザイゴートは形成されるが、次のステージであるオオキネートが全く形成されないという表現型を示した。AP2-FG2-GFP融合原虫を作成し発現解析を行ったところ、AP2-FG2タンパク質の雌ガメトサイトの核への局在を確認した。そこでAP2-FG2-GFP原虫を用いChIP-seqを実施したところ、この転写因子が雌特異的遺伝子の上流域に結合していることを確認した。 さらに雄ガメトサイトの分化に関与するSNF2-like chromatin remodeling ATPaseを見出した。その遺伝子をgSNF2と名付け、遺伝子欠損原虫を作成しその表現型を解析したところ、gSNF2欠損原虫では正常な雄ガメトサイトを形成することができず蚊への伝播能が完全に失われていた。さらにgSNF2-GFP融合原虫を作成しChIP-seqを行ったところ、gSNF2は雌雄ガメトサイト遺伝子群の上流域に特異的に結合することが分かった。さらにgSNF2のrecruitmentに必須の配列を同定した。
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