研究課題/領域番号 |
20K07465
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
川合 覚 獨協医科大学, 医学部, 教授 (70275733)
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研究分担者 |
岡本 宗裕 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (70177096)
案浦 健 国立感染症研究所, 寄生動物部, 室長 (90407239)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 三日熱マラリア原虫 / Plasmodium vivax / サルマラリア原虫 / Plasmodium cynomolgi / 肝臓内休眠体 / 可視化 / GFP / ルシフェラーゼ |
研究実績の概要 |
【背景】三日熱マラリアの制圧には肝臓内の休眠体に対する対策が不可欠である。しかし、休眠体の生物学的な基盤情報は非常に少なく、治療薬も1950年代からプリマキンのみで対応している。休眠体に関する研究が発展しない理由の一つは、容易に検証できる実験系が確立されていないことにある。そこで本研究では三日熱マラリア原虫と酷似した特性を有し、遺伝子構造上も極めて近縁のサル・マラリア原虫(Plasmodium cynomolgi, 以下Pcy )の可視化株を開発し、休眠体ステージの解析を目的とした新たな実験系の確立を試みた。【材料・方法】 昨年度までの研究によりPcy B, GFP:Luciferase発現株(可視化株)を作製した。Pcy B可視化株は赤球内ステージおよびハマダラカ(Anopheles stephensi )体内のいずれの発育ステージにおいてもGFP:Luciferaseの発現シグナルが確認された。今年度は、本株のサル肝臓内における動向を観察する目的で以下の実験を行った。Pcy B可視化株の感染血液を人工吸血させたハマダラカの唾液腺よりスポロゾイト(SPZ)を採取し、実験用アカゲザル4頭に静脈内接種した。2頭は末梢血液に原虫が出現する前に、そして2頭は末梢血液の原虫をクロロキンで治療後に剖検した。剖検時に取り出した肝臓は、直ちにNEWTON 7.0 In Vivo Imaging システムで観察した。【結果】SPZを50K個接種した個体では14日後、400K個接種した個体では9日後より末梢血液中に原虫が出現し、以降寄生率は増加した。一方、SPZの接種後、末梢血液中に原虫が出現する前(接種7日後)に剖検した個体では、肝臓実質内にスポット状の強いLucシグナルが多数みられ、これらのシグナルが原虫の増殖像であることがHE切片上でも確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度の新型コロナウイルス肺炎の流行により、実験施設の立ち入り自粛、および所属機関における県境を越える出張の自粛があり、実験の開始が大幅に遅れた。また予定していた実験用アカゲザルの導入にも遅れが生じ、実験環境を整えるために時間を要した。しかし、およそ10か月程度遅れて開始した実験であったが、実験開始後はほぼ計画通りに進展した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までに、恒久的にGFP:Luciferaseシグナルを発現するPcy B株(可視化株)を確立し、肝臓内の発育に関する観察が可能となった。今後は実験用アカゲザルを用いて本株の感染実験を行い、肝臓内発育ステージの発育を抑制する抗マラリア剤(アトバコン)や、肝臓内休眠体を殺滅する抗マラリア剤(プリマキン)の影響を観察したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の開始が予定より大幅に遅延したため、当初見込んでいた段階まで実験が到達しなかった。そのため、予算額に対する余剰金が発生した。来年度は、それらの研究資金を基金とし、実験を継続する計画である。
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