研究課題/領域番号 |
20K07469
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
安田 好文 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (50333539)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | TSLP / CD4非依存性 / Th2分化 / 粘膜型肥満細胞 |
研究実績の概要 |
ILC2(group 2 innate lymphoid cells)の活性化にはIL-33などの上皮細胞由来サイトカインが重要な役割を果たすことが知られている。これまでの研究で糞線虫(Strongyloides venezuelensis)感染後のマウスの寄生虫種非特異的な感染抵抗性にIL-33がILC2活性化を介して作用することを明らかにしてきたが、S.venezuelensis感染抵抗性におけるTSLP(thymic stromal lympholoietin)の役割は不明であった。そこで、TSLPR欠損マウスを用いて、糞線虫感染に対する生体防御におけるTSLPの役割を検討した。その結果、S. venezuelensis感染に対してTSLPR欠損マウスは腸管に寄生する成虫数が増加し、また糞便1g中の虫卵数も増加していた。一方で排虫の時期は大きく変わらなかったことから、TSLPは感染初期の抵抗性に関与することがわかった。このとき、初期のTh2分化が抑制されており、腸管粘膜型肥満細胞の集積も著しく減少した。このことからTSLPによるDC2分化と初期のT細胞活性化が不十分なため抵抗性低下を引き起こされると考えられたが、CD4陽性T細胞を除去してもTSLPR欠損マウスと野生型マウスの差はなくならなかったことから、TSLPはCD4T細胞の活性化のみならず、自然免疫系に作用してS.venezuelensis感染を抑制することを明らかにした。また糞線虫感染1ヶ月後のマウスにNippostrogylus brasiliensisを感染させ、メモリー様ILC2の作用を検討した結果、N.brasiliensis感染に対する抵抗性には差が認められなかった。ただし、肺のILC2数は減少しており、ILC2数の制御にTSLPが関与する可能性があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ILC2の制御には上皮由来サイトカインが重要であることはよく知られているが、TSLPR欠損によるS.venezuelensis感染に対する抵抗性にどのような影響があるかは不明であった。ここまでの研究ではTSLPがCD4陽性T細胞非依存性に感染抵抗性に寄与することを明らかにしており、今後TSLPによるILC2の活性化と自然免疫による感染制御機構について明らかにし、TSLPシグナルの有無によるメモリー様ILC2の数の制御を解析する基盤ができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
メモリー様ILC2分化、維持のメカニズムを明らかにするため、IL-33, TSLP, IL-25, IL-1などの上皮由来サイトカイン、さらにIL-9やGM-CSFなどのILC2の産生するサイトカインの欠損マウスや中和抗体を用いてS.venezuelensis感染後のN.brasiliensis感染抵抗性を検討する。またIL-33投与による非感染マウスやin vitroでのメモリー様ILC2誘導を試み、誘導条件を明らかにする。
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