本研究課題は、日本で分離された遺伝子型と表現型に特徴がある株を材料として用い、中間宿主であるマウスの腸内で交雑させた株を多数取得し、ゲノムリシーケンスにより得たSNP情報を使ったQTL解析によって新規の病原性因子を同定することを目的とする。 本研究で用いる岐阜株は、マウスに病原性を示さないCTG株と遺伝的にほぼ同一であり、2株間でアミノ酸配列に変化がある遺伝子は100に満たないが、マウスに対して明確な病原性を示す。そこで岐阜株とCTG株のそれぞれについて、誘発突然変異により薬剤耐性株を作出して交雑親株とする。トキソプラズマの交雑実験を行うには、従来動物実験施設の管理運営上のハードルが存在していたが、2019年にマウス腸内で有性生殖を行わせる実験系が報告されたため、これを応用して交雑実験を行う。得られた交雑株を薬剤でスクリーニングし、ゲノム配列を取得することでSNP情報を用いたQTL解析を行い、病原性因子を推定する。最終的に交雑親株の病原性候補因子を破壊して、岐阜株とCTG株の双方の遺伝子型を相補した株を作出し、病原性を評価することで新規病原性因子を同定するという計画である。 しかしながら、研究期間の開始とともにCOVID-19の感染拡大が起こり、新規の実験を開始することができなかった。とくに長期に渡る培養実験や動物実験は、感染拡大が繰り返し先が見通せない状況では着手困難であった。本年度についても文献調査による情報収集につとめたのみで、実質的な研究成果は得られていない。
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