研究課題/領域番号 |
20K07473
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
安田 加奈子 (駒木加奈子) 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, 研究所 熱帯医学・マラリア研究部, 研究員 (50415551)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マラリア原虫 / 転写因子 / 転写調節 / ChIP-Seq / レポーターアッセイ |
研究実績の概要 |
マラリア原虫赤血球内寄生期の厳密な遺伝子発現制御機構は、それを担う転写因子の正体を含めて詳細がわかっていない。申請者は熱帯熱マラリア原虫のトロホゾイト期に発現する遺伝子pf1-cys-prxのプロモーターに作用して転写活性化する因子PREBPを同定、更にバイオインフォマティクス 解析にてPREBPと類似構造を持つ新規因子Aを同定した。本研究では PREBPと因子Aについて、1) 因子の細胞内局在を調節するタンパク質修飾の詳細、および、2)因子が発現制御する遺伝子のプロモーターに共通するモチーフを明らかにし、マラリア原虫赤血球内寄生期の細胞周期進行を支える転写制御機構の解明に迫ることを目的とする。本年度は上記の2)について解析するために、昨年度おこなったPREBPを対称としたクロマチン免疫沈降と次世代シーケンサーによる網羅的ChIP-Seqによって得られた遺伝子群を機能別に分類した。結果、PfEMP1やrifinなどの赤血球表面抗原遺伝子が43%、キナーゼ/ホスファターゼ遺伝子が8% 、DNA/RNA結合タンパク遺伝子が6%、脂質代謝に関わる遺伝子が5% 、その他および機能未知タンパクの遺伝子が38%となっており、PREBPによって原虫の抗原多型のswitching、house keepingな代謝などの、生育の根幹に関わる遺伝子群の発現が調節されている可能性が考えられた。候補遺伝子が実際にPREBPによる制御を受けているのかを明らかにする目的で、候補遺伝子のプロモーターの下流にルシフェラーゼ遺伝子を接続したプラスミド、また同じプラスミド上にPREBPの発現カセット を挿入したプラスミドを作成し、培養熱帯熱マラリア原虫に導入してルシフェラーゼアッセイをおこなった。結果一部のrifin遺伝子プロモーターでPREBPによる遺伝子発現抑制効果が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は昨年度のChIP-Seqにより得られたPREBPによる制御を受けている因子群を機能別に分類し、さらに実際のPREBPによる転写制御を明らかとするためのレポータアッセイを進めたので着実に進展はしている。しかし、昨年より新型コロナウイルス感 染症流行の影響にて研究所に出勤できない期間があったための遅れがまだ影響しており、さらに物品の納期も遅れがちで、実験の進行に影響している。予定していた因子AについてのChIP-Seq、また、PREBPおよび因子Aのタンパク修飾に関する解析にも着手できていないので、「やや遅れている」との自己点検結果に至った。
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今後の研究の推進方策 |
今後はレポーターアッセイによってPREBPによる直接の発現の調節を受ける遺伝子群をさらに特定する。解析するためのプラスミドベクターのセットはできている。これら の5’の配列についての解析結果から、各転写因子の結合モチーフを明らかにする。因子AについてもChIP-seqをはじめ、同様の解析を進める。この解析の 予測される成果として、PREBPと因子Aによってどの遺伝子群の発現が制御されるか、明らかとなることがあげられる。その仮説としてはi) 細胞周期に 依存して発現のタイミングを同じとする遺伝子群、ii) 生物学的に同じ機能(例:抗酸化系など)に関わる遺伝子群、 iii) 同一染色体上で核内の特定の位置に 配置される遺伝子群、等を想定している。 また、ChIP-Seqで明らかとなる、PREBPおよび因子Aのクロマチン上への集積は直接のプロモーターへの結合のほかに、ほかのタンパクを介しての結合も含んでいる可能性があることから、集積している箇所はクロマチン上で転写が活性化している箇所か、あるいはその逆かについても、既存のトランスクリプトームのデータ、および、定量RT-PCRを用いて検討する。PREBPおよび因子Aの機能、特に核局在を調節するタンパク修飾についても解析を進めていく。核画分、細胞質画分由来のPREBP、および因子Aについて抗リン酸化抗体、抗ユビキチン化抗体、抗アセチル化抗体を用いてこれらの修飾かがあるかを調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の流行の影響によって、購入を希望する消耗品プラスチック製品)などが納入されないことがあった。 学会に出張することもなかったので、旅費として計上していた分も使用しなかった。次年度以降は、前年度に予定していた実験も含み、遂行する予定であり、順次必要な消耗品を購入していく。 また、ChIP-Seqなどの受託解析も予定にしたがって遂行していく。
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