本研究の目的はEHEC特異的な未知生体防御機構抵抗因子を特定して、詳細な機能解析を行うことである。 EHEC特異的な生体防御機構抵抗因子を明らかにするために、3種類のNO消去酵素遺伝子を欠失したEHEC変異株を構築し、このゲノムDNAを用いてプラスミドライブラリーを構築した。これを3種類のNO消去酵素遺伝子を欠失した大腸菌変異株に形質転換した。この大腸菌ライブラリーに対して嫌気条件でNO処理を行い、生き残ったクローンを回収するためにLB平板に広げた。濃縮されたクローンが保持するプラスミドのインサートDNAをPCRで増幅し、塩基配列を決定した。その結果、28クローンのインサートDNAには、3カ所のDNA領域が重複して複数のクローンに存在していた。そこで、この領域が機能的であるかどうかを確認するために、個々のクローンのNO抵抗性が上昇しているかどうかを確認したところ、それらのクローンはNOに対する抵抗性を上昇させていた。次に、陽性クローンの責任DNA領域を明らかにしたところ、O157特異的なプラスミドであるpOSAK1の一部でああった。さらに、NO抵抗性の責任遺伝子を明らかにするために、欠失変異プラスミドを用いて解析し、RNA結合タンパク質をコードしているrop遺伝子であることが明らかになった。このRopタンパク質はプラスミドの複製に関与している2種類のRNA分子と相互作用することが示されていたが、EHECの生体防御機構抵抗因子として働くことは示されていなかった。Ropタンパク質はEHECのsmall RNAを介した生体防御抵抗機構の増強に関与していると思われるが、その作用機序の詳細は明らかになっていない。今後はRopタンパク質によるEHECの生体防御抵抗性増強機構の詳細について明らかにする。
|