| 研究課題/領域番号 |
20K07481
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| 研究機関 | 京都府立大学 |
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研究代表者 |
岡 真優子 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (40347498)
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| 研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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| キーワード | 細胞外小胞 / 大腸菌 / マクロファージ / 炎症性サイトカイン / 外膜由来小胞 / エキソソーム |
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| 研究実績の概要 |
モデル細菌の1つである大腸菌が分泌する細胞外小胞（OMV）に暴露されたマクロファージが、自ら分泌する細胞外小胞（エキソソーム）を介してナイーブなマクロファージに炎症性サイトカイン産生を促見した。このことは病原体との直接の接触ではなく、2種類の細胞外小胞を介して間接的にも炎症が誘導されうることを初めて示したものである。しかし、細胞外小胞に含まれる炎症誘導の鍵となる因子(病原性分子)については全く不明である。そこで、細胞外小胞を一つの病原性複合分子として捉え、細菌と宿主の両方面から細胞外小胞に内包される病原性分子の役割について探索した。
昨年度の研究結果では、大腸菌のOMVに内包されるCirAがマクロファージに取り込まれた後、エキソソームに内包されて炎症反応を引き起こすことを報告した。そこで今年度は、大腸菌におけるCirAの発現量とエキソソームの炎症作用の関係を明らかにした。大腸菌の外膜に局在するCirAは、鉄複合体のトランスポーターとして機能しており、環境中の鉄濃度によるCirA発現量の変化が報告されている。鉄制限培地に鉄を添加すると、鉄の濃度依存的にCirAは消失した。一方、鉄を含むLB培地にEDTAを添加すると、CirA発現が増大した。さらに、それぞれの条件下の培養液から精製したOMVをマクロファージに作用させてエキソソームの作用を検討した結果、エキソソームによる炎症性メディエーターの誘導作用とCirA発現量に正の相関がみられた。
さらに、リポソームを用いた組換えCirAタンパク質のマクロファージへの炎症作用は、組換えCirAタンパク質単独と比較して強かった。また、炎症作用は、リポソーム濃度に依存して増強された。
以上の結果より、CirAは、エキソソームの膜を介してマクロファージ内に取り込まれて、炎症を惹起することがわかった。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、大腸菌による炎症反応における細胞外小胞の役割を明らかに、細胞外小胞による炎症因子の誘導機構の解明を目指している。今年度は、エキソソームの主要な炎症誘導因子としてCirAの発現量と炎症作用の関係を明らかにした。さらに、CirAはエキソソームの膜を介してマクロファージに取り込まれることで、細胞内の分子と相互作用することを見いだした。また、次年度の研究準備のため、抗CirA抗体を作成した。今後、蛍光標識した抗体を用いてCirAのマクロファージ内での動態を調べる予定である。
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| 今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、大腸菌感染マクロファージのエキソソームには、大腸菌のOMVにより菌体外へ分泌されたCirAが内包されており、このCirAがナイーブなマクロファージに炎症性サイトカインの誘導を引き起こすことがわかった。CirAは、大腸菌とマクロファージの直接的な接触ではなく、細胞外小胞を使った間接的な炎症誘導を引き起こす病原性因子と考えられる。病原性因子を同定できたことから、これからの本研究の最重要課題は、ドナー細胞内でどのようにして病原性分子CirAが大腸菌OMVからエキソソームへ積み替えられるのかを明らかにすることである。CirAがマクロファージへ作用するためには、エキソソームの膜が必要となっていることが示唆された。このことは、レシピエント細胞でのエキソソーム内CirAの標的分子が細胞内に存在する可能性を示している。そこで今年度は、大腸菌による炎症誘導機序において、CirAの細胞外小胞を介した新たな炎症情報伝達機構の解明を目指す。そこで、当初の予定通り、次の方法でOMV中CirAのドナーマクロファージ内への取り込みと分泌の機序を明らかにするために実験をおこなう。さらに、CirAの作用分子の同定を目指す。
1．蛍光標識した抗体を用いて、大腸菌OMVおよびエキソソームでの病原性分子の局在（内部または膜表面）を解析する。もし、病原性分子の発現量が少なく抗体で検出が難しい場合は、蛍光タンパク質融合組換え病原性分子を作成する。
2．病原性分子の有無によりOMVを取り込んだドナー細胞のRNA発現を比較解析し、エキソソーム産生に作用する病原性分子の標的分子を探索する。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
現在論文投稿の準備を進めており、3月末に英文校正を依頼した。
今年度分の残額は翌年度分と合わせて英文校正費用の支払いに充てる予定である。
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