研究実績の概要 |
小児下痢症患者から分離したProvidencia rustigianiiが保有する細胞膨化致死毒素(cdt)遺伝子と3型分泌装置に関わる遺伝子を持つプラスミド(pJH1)の伝達性について解析した。自殺ベクターを用いて、P. rustigianii JH-1株のpJH1プラスミド上のcdt遺伝子をβラクタマーゼ耐性遺伝子で置換したcdt遺伝子欠損変異を作製した。本変異株を接合伝達実験のドナーとして供し、レシピーエントとしてクロラムフェニコール、テトラサイクリン、シプロフロキサシンあるいはリファンピシンのいずれかに耐性を持つP. rustigianii, Providencia rettgeri, Providencia heimbachae, Providencia stuartii,それぞれ1株、Providencia alcalifaciens, Salmonella enterica, Shigella flexneri, Pseudomonas aeruginosaそれぞれ2株、大腸菌4株を用いた。その結果、大腸菌1株で最も高率の10-3以下の割合で、P. rustigianii とP. rettgeriでは10-5以下の割合で伝達された。その他の菌での接合伝達率は10-7以上であった。これらの研究成果を含めた論文をまとめ投稿した。 さらに、野生動物からcdt遺伝子陽性のP. rettgeri、4株、P. rustigianii、4株、P. alcalifaciens、12株を分離した。これらの菌株に対してもS1-PFGEにより、プラスミドを保持しているか、プラスミド上にcdt遺伝子を、3型分泌装置に関わる遺伝子をプラスミド上や染色体上に保持しているかについて解析し、特にP. rustigianiiで同様のプラスミドを保持していれば全ゲノム解析を行い、ゲノム比較を行なっていく予定である。
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