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2020 年度 実施状況報告書

非共有結合性阻害剤の探索を目的としたペニシリン認識酵素のX線結晶解析

研究課題

研究課題/領域番号 20K07484
研究機関城西国際大学

研究代表者

額賀 路嘉  城西国際大学, 薬学部, 教授 (20251150)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード薬剤耐性 / 抗生物質 / β-ラクタマーゼ / カルバペネマーゼ / MRSA / PBP / X線結晶解析 / 構造生物学
研究実績の概要

本研究では、現在、臨床上の問題となっている、β-ラクタム系抗生物質耐性菌を征圧するために、ペ ニシリン認識酵素である、ペニシリン結合タンパク質 (PBP) とセリン β-ラクタマーゼを研究対象とする。一般的なβ-ラクタム系抗生物質は上述酵素の活性中心 Ser とアシル中間体を形成して阻害作用を示すが、このメカニズムは耐性菌が出現しやすい。そこで、アシル中間体を形成しない阻害剤を発見することを目標に研究を行う。X線結晶構造解析と分子動力学計算、また、酵素化学的解析を組み合わせて研究を遂行し、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)の PBP2a と Ser カルバペネマーゼの酵素反応機構への理解を深め、制圧するための医薬品開発あるいは、医薬品利用方法を提案していくことを目的としている。そのために具体的には 3 つのカテゴリーの研究を行う。A:MRSA 由 来の PBP2a、Streptmyces sp. R61 由来可溶性 PBP とそれらと阻害剤複合体の X 線結晶解析および分子動力学計算。B:Burkholderia 属由来 PenA Ser カルバペネマーゼ、S70, R220, E166などの変異酵素の構造と性質を解析することで、酵素反応機構を解明し、各種β-ラク タマーゼ阻害剤との複合体の X 線結晶解析、分子動力学計算を行うことで、新しい阻害剤へのヒントとなる情報を得る。C:上記酵素の阻害剤の探索と、ビアコアを利用した親和性評価。新阻害剤複合体のX線結晶解析(含既知阻害剤)。以上より、MRSAやカルバペネム耐性メカニズムの分子、原子レベルでの理解を深め、阻害剤探索を行う。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

PenAカルバペネマーゼに関する研究は順調に進んでいる。多少の遅れはあるものの、S70G変異体は4つ中最後の1つの構造に取り組んでいる。3月のシンクロトロン利用で、回折像は得られたものの、途中、アクシデントにより凍結した結晶に霜が付着してしまい、解析を諦めざるを得なかった。次回の機会に再度データ収集を行いたい。E166D変異酵素については、現在精製途中である。またR220A変異体についての解析を終え、分子動力学計算を行った上で論文を発表した。
また、PenAカルバペネマーゼと阻害剤の構造解析は今年度は行っていない。その理由は阻害剤の入手が遅れたためである。現在、入手済みで、早々に着手する予定である。
一方、MRSA由来、PBP2aのプロジェクトは予定外のことが多くおこり、進行が遅れている。発現の条件、そして、タンパク質が低イオン強度で沈殿してしまうことが問題となり、精製タンパク質を得るまでに長い時間がかかった。イオン交換クロマトグラフィーの変わりに、高塩濃度で可能である疎水性クロマトグラフィーを利用した。また、結晶化においても、既知の条件では、単結晶を得ることはできずに、再度いちからスクリーニングを行っている。現次点でも綺麗な単結晶は得られていないが、添加物の工夫により単結晶に近いものを得ている。近々にX線照射実験を行えるものと期待している。申請内容には、PBP2aに加えて放線菌由来の可溶性PBPを遺伝子合成を行い、リファレンスとして利用するとしていたが、これについては今年度、PBP2aの回折像が得られたところで考えたいと思う。場合によってはこちらは行わずに、PBP2aのみで研究を進めることも考える。

今後の研究の推進方策

PBP2aについて、何よりも、単結晶を得て、アポ酵素の構造解析がルーチンに行えるようにする。また、精製方法がある程度完成に近づいているため、精製サンプルを用いて、ビアコアによる解析をスタートさせたいと考えている。最初は既知の阻害剤を用いて結合過程を可視化したいと思う。
PenAカルバペネマーゼの変異体解析については、S70Gは最後の1つの構造を得て、論文化、E166Dについては、今年度中にデータ収集を目標に実験を行いたいと考えている。
また、Dr. Papp-Wallaceより、カルバペネマーゼについてアメリカで認可されたばかりの阻害剤についての解析依頼が来ている。これについても、阻害剤探索の有用な情報となり得るので今後取り組む予定である。現在、2種類の阻害剤が研究室に到着しており、今年度の早い時期に複合体のデータ収集を行い、解析を行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

最後の試薬の発注時に少額残ってしまった。次年度合わせて利用したい。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [国際共同研究] Louis Stokes Cleveland VAMC Cleveland(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Louis Stokes Cleveland VAMC Cleveland
  • [雑誌論文] Assessing the Potency of β-Lactamase Inhibitors with Diverse Inactivation Mechanisms against the PenA1 Carbapenemase from Burkholderia multivorans.2021

    • 著者名/発表者名
      Nukaga M, Yoon MJ, Taracilia MA, Hoshino T, Becka SA, Zeiser ET, Johnson JR, Papp-Wallace KM
    • 雑誌名

      ACS Infect Dis.

      巻: 7 ページ: 826-837

    • DOI

      10.1021/acsinfecdis.0c00682.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Characterizing the resistance mechanisms present in an unusually, highly multi-drug resistant isolate of Burkholderia multivorans(ASM Microbe online, ePoster)2020

    • 著者名/発表者名
      M. Nukaga, S. A. Becka, E. T. Zeiser, J. J. LiPuma, K. M. Papp-Wallace
    • 学会等名
      5th ASM Microbe Meeting
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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