研究実績の概要 |
化学発光基質を用いたβ-1,6-グルカン高感度測定法と様々な多糖検体との反応性を評価し、真菌感染症以外の血清において偽陽性反応が生じる可能性を検証した。本測定法は過去に日本で医療用途に用いられたβグルカン製剤のうち、スエヒロタケ由来のシゾフィラン(SPG:モノグリコシルβ-1,6-/β-1,3-グルカン)とは反応性を示さなかったが、カワラタケ由来のクレスチン(PSK:βグルカン-タンパク質複合体)と僅かに反応した。従って、免疫賦活作用を目的として一部のβグルカン製剤を使用した場合には偽陽性反応が生じる可能性が示された。構造の異なるβ-グルカンとして、植物由来β-グルカン、細菌由来β-グルカンには反応しないことを確認した。一方、食品にも利用される酵母由来β-グルカンとは反応性を示した。また、臨床で利用されるβ-D-グルカン試験は、免疫グロブリン製剤(IVIG)と反応性を示すが、pH調整後のIVIGはβ-1,6-グルカン特異的プローブと反応しないことを確認した。これらの結果より、従来のβ-D-グルカン試験に比べて、β-1,6-グルカン高感度測定法が真菌由来βグルカンに対する反応特異性が高いことが示された。 また、マウスにおけるβグルカンの体内動態に関する検証を進め、β-1,6-グルカンの静脈内投与では、分子量の違いにより臓器への分布が異なることを明らかにした。一方、β-1,6-グルカン構造を持たない、異なる構造のβグルカンを経口摂取させ、既存のβグルカン測定Kitを用いて臓器への分布を検証したところ、臓器からβグルカンは検出されなかった。
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