研究課題
病原性真菌であるカンジダ属真菌が増殖する際にはβ-1,6-グルカン(16BG)を放出することが明らかとされている。本研究では改変型酵素を用いて独自開発した16BG高感度ELISAを用いて、16BGを真菌症バイオマーカーとして利用可能か、様々な観点から検証した。前年度までに、ヒト血清中に16BG高感度ELISAを阻害する因子が存在すること、検体前処理法として希釈加熱法を用いることで、16BGの高い回収率が得られることを明らかにした。また、化学発光基質を用いた16BG高感度ELISAの偽陽性反応の発生について検証し、植物・細菌由来β-グルカンとは反応しないが酵母β-グルカンとは強い反応を示すこと、β-グルカン製剤のうちSPGとは反応せず、PSKと僅かに反応し、その一方で16BGの過剰経口摂取マウスの血中から16BGは検出されないことが示された。最終年度には、16BGを静脈投与したマウス体内から16BGが消失するまでの期間を解析し、約1か月間は臓器中から検出されること、β-1,6-グルカナーゼを追加投与することで大部分が消失することを明らかにした。消化管炎症を誘発したマウスを用いて、可溶性16BGの消化管からの移行を解析したところ、体内への16BG取り込み量に炎症の影響は見られず、血中からもBGは検出されなかった。また、16BGを静脈投与したマウスに急性炎症を誘発し、16BGが臓器から血中に移行するか検証したところ、血中16BGは検出されず、対象群と比べても臓器内16BG量に有意な差がないことを見出した。これらの結果は、16BGの血中濃度が食事や消化管炎症の影響を受けにくいこと、さらに感染や食事により一時的に臓器内に蓄積した16BGが、炎症時に全身に流出する可能性が低いことなどを示しており、16BGが真菌感染症特異的なバイオマーカーと成り得ることを示唆している。
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Nature Methods
巻: 19 ページ: 1250-1261
10.1038/s41592-022-01616-x