研究実績の概要 |
本年度は、「In vivoでのEV活性と宿主側との相互作用」の研究項目について実施した。 まず、劇症型・非劇症型由来の分離株からそれぞれ精製した細胞外小胞(EV)をマウスの腹腔内に投与し、投与から24h、48h後に各種炎症性サイトカインが惹起されるか否かを評価した。その結果、dTHP-1細胞を用いたin vitroの実験で示されたIL-8, TNF-α, IL-1βの発現上昇は認められず、また、EVを投与したマウスに劇症型由来株および非劇症型由来株を感染させたが、マウスの生存率および宿主細胞内での生菌数に変化は見られなかった。そのため、本年度予定していた、EV投与による宿主側の遺伝子発現パターン変動に関する解析は実施していない。 本研究では、A群レンサ球菌のEVsにおいて、病原性に寄与する多数のタンパクが同定され、さらにそれらタンパクが劇症型株由来EVにおいてエンリッチされていることが明らかとなった。また、培養細胞を用いたin vitroの試験では、EV添加後、4時間で非常に強い細胞傷害性(20%)を示し、また、その影響はEVsに含まれているStreptolysin Oによって引き起こされていることが確認された。一方、非劇症型株由来のEVsでは、劇症型株由来のEVsに比べ弱い細胞傷害性(3%)を示すのみであり、Streptolysin O非依存的な活性であった。免疫応答についても、複数の炎症性サイトカインの顕著な発現上昇が認められ、EVsが宿主細胞における免疫応答にも寄与していることが明らかとなった。しかしながら、in vivoの実験では上記の免疫応答の変化が確認できず、また、マウスへの明らかな病原性も認められなかったため、引き続き、EVによる病原性の追加解析と病態との関連、宿主側因子等を考慮した解析が必要である。
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