研究課題/領域番号 |
20K07496
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
菅原 庸 国立感染症研究所, 薬剤耐性研究センター, 室長 (70452464)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | カルバペネム耐性 / 大腸菌 |
研究実績の概要 |
カルバペネム耐性腸内細菌科細菌に対しては、有効な抗菌薬がほとんど存在せず、患者の予後も極めて深刻であることから、臨床現場での蔓延が世界で大きな問題となっている。特に大腸菌は、他の腸内細菌科細菌に比べ優勢にヒトの腸内に保菌され、更なる拡散のリスクが高い。また、ヒト腸内に定着した大腸菌は時として尿路感染症や敗血症等の腸管外感染症を引き起こしうる。しかし、カルバペネム耐性の大腸菌のうち、どのようなタイプのものが拡散しやすいのか?、またどういったタイプのものが感染症を引き起こしやすいのか?、についてはあまり明らかではない。本年度は、本菌の拡散・伝播に関わる特性を明らかにするべく、カルバペネム耐性の大腸菌ST8453株に着目して解析を進めた。本系統は、本研究代表者が所属する研究グループが収集したミャンマー由来の臨床、環境排水、食品、及び当地の健康な在留邦人から共通して分離されたものであり、広い拡散を可能にする何らかの特性を有することが予想された。ST8453に近縁な系統であるST167との比較ゲノム解析を行った結果、ST8453に特異的なDNA修飾酵素を見出し、遺伝子欠失株の作出を行った。得られた変異体と野生株を用いて増殖速度や薬剤耐性度等について比較実験を行ったが、これまでのところ大きな差異は見いだされていない。そこで、両者の転写レベルでの比較を網羅的に行うため、RNA-seqによる解析を行った。現在その結果について解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
遺伝子欠失体の作製とそれを用いた解析を進めることができたことから、拡散・伝播性に関する研究に一定の進捗があった。一方で、大腸菌の病原性に関する計画にあまり進展がみられないため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、ST8453系統をモデルとしてカルバペネム耐性大腸菌の拡散・伝播に関わる特性に着目し、近縁系統との比較解析により見出した本系統特異的な遺伝子の機能を明らかにするべく解析を進める予定である。また、当初計画していたカルバペネム耐性大腸菌の病原性についても、単一病棟由来の血液由来株と便スクリーニング検体由来株を用いた比較ゲノム解析を通してアプローチする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画の一部に遅れが生じていることから、次年度使用額が生じた。次年度にはそれらも含めて遂行する予定である。
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