研究課題/領域番号 |
20K07498
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
大岡 唯祐 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 准教授 (50363594)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Escherichia albertii / 病原機構 |
研究実績の概要 |
新興下痢症起因菌Escherichia albertii(EA)は、2003年に大腸菌の近縁種として同定された菌種であり、公開データベース上に存在する243株のゲノム情報との大規模比較ゲノム解析から、本菌に特異的な遺伝子群や病原関連遺伝子群を多数同定している。また、本菌がアメーバ内で増殖出来ることも明らかにした。本菌による感染は感染源が特定されないものが多いものの、「水」を介して感染している可能性が疑われる事案が多く、アメーバ内での増殖能は本菌が水環境において生存するための戦略として、非常に重要と考えられる。 本研究では、「①EA29株のアメーバ内増殖効率の検討」、「②アメーバへの感染・増殖に関わる因子の同定」、「③種々のアメーバ類によるEA増殖効率の比較」、「④水環境からのアメーバ内増菌法の確立と応用」の4項目の解析を行い、本菌の水環境からの感染リスクを明らかにすることを目的とした。 本年度は、項目②を中心に解析を進めた。本菌特異的な病原関連候補遺伝子に着目し、その機能を同定することを目的とした。当該遺伝子の遺伝子破壊株と野生株を用いた培養細胞への感染実験の結果、A遺伝子を破壊した際に細胞内増殖能が著しく低下することが明らかとなった。また、本菌が保有する2種類の3型分泌系の遺伝子破壊株においても細胞内増殖能に変化が見られなかったことから、A遺伝子は3型分泌系非依存的に機能することが明らかとなった。A遺伝子ならびに関連が示唆される遺伝子群については、リアルタイムRT-PCRによる発現条件解析も実施し、37度, 低栄養条件での培養により、mRNA発現が亢進することも明らかにしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
R2年度の研究計画として、「①EA29株のアメーバ内増殖効率の検討」、「②アメーバへの感染・増殖に関わる因子の同定」、「③種々のアメーバ類によるEA増殖効率の比較」を並行して実施する予定であったが、実験において学術的に興味深いデータが得られたことから、項目②を中心として優先的に進めることとした。そのため、項目①, ③は少し遅れ気味である。
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今後の研究の推進方策 |
「②アメーバへの感染・増殖に関わる因子の同定」については、当該遺伝子に対する抗体作製が完了し、その抗体価測定とタンパク発現解析を進めている。今後は「①EA29株のアメーバ内増殖効率の検討」および「③種々のアメーバ類によるEA増殖効率の比較」を並行して進める予定であり、種々のアメーバを早急に取得・購入する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
R2年度は、コロナ感染症の影響により、学会参加が無くなったため、その費用を次年度に繰り越した。加えて、種々のアメーバ取得および培養に関して研究協力者との研究打ち合わせや技術提供を受けられなかったため、研究計画の実施順序を入れ替えたことで、使用する物品等の費用に変更が生じた。R3年度はR2年度計画で実施できていない種々のアメーバによる解析のため、その取得・購入および研究協力者による技術指導などに使用する計画である。
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