研究課題
新興下痢症起因菌Escherichia albertii(EA)は、2003年に大腸菌の近縁種として同定された菌種であり、243株の大規模比較ゲノム解析から、本菌がlocus of enterocyte effacement (LEE)およびE. coli type III secretion system 2(ETT2)と呼ばれる2種類のIII型分泌系を高度に保有することを明らかにした。このうちETT2は大腸菌においてはほぼ全ての株で不完全であり機能しないとされているが、EAでは多くが高度に保存しており機能する可能性が高いことがわかった。また、低温・低栄養という環境でのみ運動性を示すことを明らかにしている。本研究では、上記の点から水棲生物内での生存の可能性に着目し、アメーバ内での生存・増殖について検討した。その結果、EAがアメーバの一つであるAcanthamoeba castelanii内で増殖出来るという新たな知見を得た。さらに、感染増殖機構の解明を目指し、本菌に特異的な遺伝子の選定と機能解析を行った結果、A遺伝子を破壊した場合にアメーバ内増殖能が著しく低下することを複数の株において明らかにした。また、本菌を効果的に回収・増菌する方法の確立を目指し、EAに特異的な表面タンパク質をコードするB遺伝子に対する抗体および免疫磁気ビーズを用いた手法の開発を試みた。その結果、EAはBタンパク質ではなく、IgGそのものに特異的に結合する性質を持つことを明らかにした。また、この性質が種に共通することを確認するためにEA 47株で検討した結果、約80%にあたる37株においてIgG結合性が見られることが明らかとなった。現在、A遺伝子について、相互作用する宿主側因子の同定を進めている。また、IgG結合性に関連する因子の同定を進めるとともに環境および便からの効果的な回収法の実用化に向けた改良を進めている。
すべて 2022
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Foodborne Pathogens and Disease
巻: 19 ページ: 823-829
10.1089/fpd.2022.0042