研究課題
近年、マダニ媒介性の日本紅斑熱の患者数が増加している。これまで、日本紅斑熱の診断は行政的になされているが、病態やリケッチア量との関係性は調べられていなかった。そこで本研究では、日本紅斑熱患者の検体中の病原体を定量的に解析した。その結果、qPCRによって算出された血液および皮膚検体中のR. japonicaコピー数と患者の予後の関係性を解析したところ、死亡患者の血液および皮膚中のR. japonicaコピー数は、回復した患者のそれらの値と比較して、有意に高いことが認められた。次に、次世代シーケンサーを用いたメタ16S解析を行い、患者間細菌叢の相違と予後との関連性について検討した。その結果、回復した患者に比べ、死亡患者の皮膚中リケッチアの存在割合について有意な差が見られなかったが、死亡患者の血液中のリケッチアの存在割合は有意に高いことが判った。また、1名の死亡患者の血液検体のみからStaphylococcus saccharolyticusを、もう1名の死亡患者の血液検体のみからEnterobacter cloacaeを検出した。S. saccharolyticusは皮膚および粘膜に常在し、脊椎椎間板炎、感染性心内膜炎の発症の報告がある。E. cloacaeは腸管内常在菌で、日和見感染症の主な原因菌の一つとして知られており、敗血症性関節炎、骨髄炎、感染性心内膜炎と菌血症などを引き起こし、死亡例の発生も報告されている。つまり、この2名の日本紅斑熱死亡患者においては、S. saccharolyticusまたはE. cloacaeによる感染症も合併していて、これにより、予後悪化につながった可能性があると考える。このように、本研究の遂行により、日本紅斑熱患者血液中のリケッチア量および日和見菌による混合感染の有無が生命予後に関連しているのかもしれないことが判明した。
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Emerg Infect Dis.
巻: 28 ページ: 2355-2357
10.3201/eid2811.212566.