研究課題/領域番号 |
20K07503
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
片山 誠一 岡山理科大学, 理学部, 教授 (70169473)
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研究分担者 |
松永 望 岡山理科大学, 理学部, 講師 (30780142)
櫃本 泰雄 岡山理科大学, 理学部, 教授 (90136333)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Clostridium perfringens / fibronectin(Fn) / フィブロネクチン結合タンパク質 (Fbp) / autolysin / GAPDH / dermatopontin / 線毛 |
研究実績の概要 |
ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)はヒトにガス壊疽と食中毒を引き起こす病原細菌として知られている。この細菌にヒトフィブロネクチン(Fn)が結合する。今までにFn結合タンパク質を4つ(FbpA~FbpD)この菌から分離、遺伝子を同定した。しかし、これらのタンパク質は、ウェルシュ菌菌体へのFn結合には関与していなかった。代わりに注目されたのが、自己溶解酵素オートリシン(Autolysin, acp)とglyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase (GAPDH)である。ウェルシュ菌オートリシン欠損株(13 acp::erm株)の菌体へのFn結合量は、低下し、相補株で回復した。おもしろいことにGAPDHの菌体への結合量もFn結合量と同様に変化した。以上のことから、菌体表層上のオートリシンにGAPDHが結合し、それにFnが結合することが考えられた。このことを証明するために現在、GAPDH欠損株の作製を試みているが、成功していない。また、昨年オートリシン自身もFn結合活性を持つことが示された。また、対数増殖期において、オートリシンは、120 kDaから95 kDaに切断されることを明らかにした。切断されたオートリシンの機能や切断メカニズムについて研究を進めている。Fn結合タンパク質のうちFbpA, FbpBについては、創傷治癒に必要なdermatopontinによるFnの繊維化を阻害すること、FbpBがウェルシュ菌菌体外へ分泌されていることを示した。このことから、FbpBがウェルシュ菌の病原性に関与していることが示唆された。ウェルシュ菌の線毛については、その線毛形成メカニズムと酵素sortese Cの立体構造の関連について詳細な解析を行った。線毛の構成タンパク質にはCppAとCppBがあるが、まずCppBが細胞壁に移動してそのあと、CppAがsortase CによってCppBに連結されることを詳細に構造生物学的に示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
4つのフィブロネクチン結合タンパク質(FbpA, FbpB, FbpC, FbpD)の機能解析については、ゆっくりだが進展している。また、菌体のFn結合に関与しているGAPDHとautolysinの研究は、順調に進んでいる。しかし、線毛の機能解析をするためのエンテロトキシン産生ウェルシュ菌HNSM101株への形質転換がうまく行かず、未だ線毛遺伝子の欠失株は得られていない。よって、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ウェルシュ菌の付着因子であるフィブロネクチン結合タンパク質(Fbp)と線毛について、継続して研究を進めて行く。Fbpについては、FbpDが、細胞壁分解活性を有することが示唆されているので、その機能を明確にしてゆく。GAPDHについては、その遺伝子(gapC)上流にキシロース誘導型プロモーターを導入し、その発現量を変化させて、Fn結合量を測定する。このことにより、GAPDHがウェルシュ菌菌体へのFn結合に関与していることを明らかにする。また、オートリシンが、フィブロネクチン結合タンパク質としてどのように機能しているのか示す。線毛に関しては、エンテロトキシン産生ウェルシュ菌HNSM101株への形質転換を上げる条件を見つけ、線毛を欠失させてその病原性と線毛との関連を調べていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
ウェルシュ菌のFn結合タンパク質の一つ、オートリシンを切断するプロテアーゼを検索中である。この候補タンパク質の同定には、質量分析が欠かせない。これには、1検体あたり14万円の費用が必要となる。候補タンパク質が複数ある場合、さらに金額が膨らむ可能性がある。この費用に科学研究費をあてる予定にしている。
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