研究課題/領域番号 |
20K07505
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
永浜 政博 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (40164462)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ウエルシュ菌β毒素 / 腸管病原性 / Caco-2細胞 / ポア形成毒素 |
研究実績の概要 |
C型ウエルシュ菌による壊疽性腸炎は、ヒトや家畜で発症が認められている。著者は、感受性細胞のP2X7受容体を認識して結合し毒性を発現することを世界で初めて明らかにした。一方、本感染症において本菌が産生するβ毒素が病原性に強く関与することが知られているが、腸管病原機構については不明な点が多い。今年度は、β毒素の腸管病原性を検討するため、本毒素を結紮マウス腸管に投与した時の病理組織学的変化、そして、腸管由来のCaco-2細胞に対する細胞毒性メカニズムを検討し、本感染症克服に役立つ知見を得る。 β毒素の腸管病原性を検討するため、本毒素を結紮マウス回腸ループに投与した。種々の時間で、回腸を取り出し、ヘマトキシリン・エオジン染色を行い、病理組織学的変化を観察した。その結果、β毒素投与した回腸は、時間と投与量に依存して絨毛の脱落が認められた。すなわち、本毒素は、腸管病原性を示すことが明らかとなった。次に、腸管由来のCaco-2細胞に対する本毒素の障害作用を検討した。その結果、本毒素処理により、Caco-2細胞のBleb形成と細胞の破壊が観察された。この障害時に、Caco-2細胞への本毒素の結合を検討すると、毒素は細胞膜に結合後、7量体のオリゴマーを形成することが明らかとなった。以上から、β毒素は、腸管上皮細胞に結合後、オリゴマーを形成し、細胞膜上で形成されたポアからの水分の流出入により、細胞を破壊し、腸管組織の絨毛の脱落を誘導することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、ウエルシュ菌のβ毒素の腸管病原性を明らかにする目的で検討を行った。まず、結紮マウス回腸ループに本毒素を投与すると、病理組織学的変化を誘導することを明らかにした。次に、本毒素の作用を細胞レベルで明らかにするため、腸管由来のCaco-2細胞に対する本毒素の障害作用を検討すると、本毒素は、この細胞でオリゴマーを形成して毒性を示すことが判明した。以上の結果は、今後のβ毒素の腸管病原性を解明する大きな手がかりとなると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ウエルシュ菌のβ毒素の作用メカニズムを、さらに詳細に検討する。 1)β毒素の腸管細胞の対する作用:Caco-2細胞を使用して本毒素によるバリア機能破綻作用や腸管上皮細胞のタイトジャンクション(TJ)分子であるオクルディンやクローディンなどに対して影響を示すかどうかを検討する。 2)感染症に対する治療薬の開発:P2X7受容体やパネキシン阻害剤がβ毒素のマウス致死活性を抑制することを報告している。これらの阻害剤が、マウス腸管での実験的C型菌感染に対して有効であるかどうかを検討する。以上より、本感染症に対して特異的に抑制効果を示す新規な作用機序を有する治療薬開発の糸口を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、コロナ禍により、大学が休校になり、研究の補助を行っていた学生が研究できない状況が続き、研究活動が例年より低下し、県境を越える学会発表も制限された。さらに、研究材料の入荷が遅れ、研究活動が遅れた。これらが次年度使用額が生じた理由である。翌年度は、通常の研究活動が再開される予定で、当初計画したウエルシュ菌β毒素の腸管病原性の解明を解明するため、助成金を有効に利用する。
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