研究課題/領域番号 |
20K07506
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
伊豫田 淳 国立感染症研究所, 細菌第一部, 室長 (70300928)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | E. albertii |
研究実績の概要 |
溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症した患者から分離したE.albertiiは志賀毒素(Stx)2型のサブタイプのうち2fを産生する。この菌株が分離されたHUS患者便からはE.albertii以外にもStx非産生性のMorganella morganiiが多数分離されたことから、患者血清(急性期と回復期のペア血清)中に凝集抗体価の存在を確認したところ、E.albertiiに対する凝集抗体上昇は急性期血清中に確認される一方、分離されたM. morganiiに対する凝集抗体はいずれの血清中にも確認されなかった。我々のHUS患者血清を用いた血清学的解析から、HUS患者血清中には、患者便から分離された志賀毒素産生性の大腸菌には抗体上昇がほぼすべての例で確認されるものの、志賀毒素非産生性で腸管フローラを形成していると考えられる大腸菌に対しては凝集抗体は確認されないことが多い。M. morganiiは術後や尿路感染症などで院内感染の原因となることが知られているが、上記の結果から、本HUS発症と因果関係があるとは言えないものと推測された。 E.albertiiにおける病原性を細菌学的に解析するため、欠損株構築のための複数の遺伝学的ツールの有用性について最適化を行った。その結果、E.albertiiにおける欠損株構築が容易となる系を確立した。この系を用いてstx2fをはじめとした各種病原性遺伝子の欠損株構築を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染症パンデミックによる研究業務の停止が一定期間生じたこと、および所属研究機関で新型コロナ感染症検査支援業務等に従事する必要等があり、本研究の活動が遅滞したため。
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今後の研究の推進方策 |
培養細胞及びマウス感染モデルを用いてStx2f産生のE.albertiiおよびその他のEHECについて病原性の評価を行う。さらに、E.albertiiがゲノム上に保有するstx2fファージとこれを溶原化させた大腸菌実験室株上のファージゲノムの比較解析を行うことで、大腸菌実験室株で産生量が著しく増大するStx2fの発現機構について解析を着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症に対する研究業務停止期間が長期化したことに加え、新型コロナ感染症の検査支援を行ってきたため、次年度使用額が生じた。今後、ゲノム解析を外注で実施し、ゲノム解析に必要なソフト・ハードを整備する費用として次年度使用する予定である。
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