研究課題/領域番号 |
20K07506
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
伊豫田 淳 国立感染症研究所, 細菌第一部, 室長 (70300928)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | E. albertii |
研究実績の概要 |
溶血性尿毒症症候群を発症した患者から分離したE.albertiiは志賀毒素(Stx)2型のサブタイプのうち2fを産生し、典型的な腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic Escherichia coli: EHEC)が保有する病原性遺伝子群であるlocus of enterocyte effacement (LEE) genesを共通に持つ。この菌株の詳細な全ゲノム解析から、EHECにおけるLEEの発現制御遺伝子として我々が以前に同定したpch遺伝子群(pchA-E)のうち、EHECにおける主たる発現制御遺伝子として機能しているpchAおよびpchBのうち、pchBと相同性の高い遺伝子が存在することを見出した。この遺伝子の破壊株を昨年度確立した遺伝子破壊法を用いて作製したところ、LEE遺伝子発現が著しく減少することが明らかとなり、E.albertiiのLEE遺伝子群における主たる発現制御遺伝子として機能していることが示唆された。EHECにおいてLEE遺伝子群の発現が上昇する培養条件をE.albertiiでテストしたところ、E.albertiiではEHECとは全く異なる培養条件下でLEE遺伝子群の発現上昇が起こることが確認された。以上の結果から、EHECとE.albertiiで共通に見出される発現制御遺伝子pchBがこれらの違いに重要であるかどうかを解析する必要性が生じた。そこで、pchBの転写レベルをモニター可能なプラスミドを構築したので、今後各種培養条件下におけるpchB転写活性を測定すると共に、EHECにおけるpch遺伝子の発現制御遺伝子として機能している遺伝子の影響をE.albertiiで解析したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度確立したE. albertiiにおける遺伝子破壊システムによって、当該株における主たる発現制御遺伝子を破壊することが出来たため、今後の研究の進展が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
EHECとE.albertiiで共通に見出されるLEE遺伝子群の発現制御遺伝子pchBの発現制御レベルを解析するため、pchBのプロモーターを含む転写制御領域と考えられる遺伝子上流領域をプロモーターを欠損したリポーター遺伝子上にクローニングした発現プラスミドを構築し、EHECとE.albertiiで違いの見られるLEE遺伝子群の発現上昇条件において、転写活性を測定する予定である。転写レベルで違いがない場合は翻訳レベルでの制御の可能性について解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に遺伝子解析用ソフト、および高額な消耗品費等を計上する計画であるため。
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