研究実績の概要 |
病原性真菌Cryptococcus gattiiは健常人に感染し、予後不良なクリプトコックス症を引き起こすことから、新規ワクチンの開発が望まれている。樹状細胞ワクチンの開発 (Ueno et al., Mucosal Immunol, 2018)に引き続き、2種類の新規経鼻ワクチンの開発に成功した (上野ら, 第64回 日本医真菌学会総会, 2020 他)。新規経鼻ワクチンが誘導するCD4陽性肺常在性記憶型T細胞のマーカープロファイルと、抗原再刺激に伴うサイトカイン産生プロファイルを明らかにした。また感染後にワクチン投与群で誘導される好酸球様環状核球 (eRINGs)のマーカープロファイルも明らかにした。経鼻ワクチンによる感染防御効果は免疫抑制剤FTY720の影響を受けず、FTY720投与下においても経鼻ワクチンによる肉芽腫形成と肺内菌数抑制効果を認めた。 eRINGsにも恒常的に発現しているインテグリン受容体 CD11bが、C. gattiiを認識する受容体であることを特定した。CD11bは菌体に直接結合することができ、食細胞におけるSyk経路の活性化・菌体貪食・サイトカイン産生に必要な受容体であった。C. gattiiの莢膜多糖は、CD11bに認識される抗原を被覆しており、莢膜欠損株の熱処理死菌を培養上清中の莢膜多糖で処理すると貪食反応などの免疫応答を回避した。一連の機構は、新規に提唱された抗原機構及び免疫回避機構である (Ueno et al., Eur J Immunol, 2021)
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