研究課題/領域番号 |
20K07507
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
上野 圭吾 国立感染症研究所, 真菌部, 主任研究官 (10550220)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 肺常在性記憶型T細胞 / protective Th2 / 肺真菌症 / クリプトコックス症 / 好酸球 / 経鼻ワクチン / 肉芽腫 / 多核巨細胞 |
研究実績の概要 |
病原性真菌Cryptococcus gattiiは、健常人に感染しクリプトコックス症を引き起こす。これまでに我々は、肺常在性記憶型T細胞 (lung TRM)を誘導するワクチンとして、樹状細胞ワクチン (Ueno et al., Mucosal Immunol, 2019)や2種類の新規経鼻ワクチンを報告した (上野ら、 第65回 日本医真菌学会総会, 2021他)。新規経鼻ワクチンの感染防御効果は、Rag-1欠損マウスで消失することから、自然免疫記憶 (Trained immunity)ではなく、従来のT細胞またはB細胞による獲得免疫が経鼻ワクチンによる感染防御効果に必須であることが明らかになった。一方で、このRag-1欠損マウスに、ワクチン接種群のCD4 lung TRMを移入すると感染抵抗性を獲得したことから、CD8 T細胞やB細胞の補助がない条件においても、CD4 lung TRMsが感染防御に寄与しうることが裏付けられた。
新規経鼻ワクチンを投与したマウスでは好酸球が誘導されることから、好酸球のC. gattiiに対する貪食反応や殺菌活性を評価した。非オプソニン化条件では、好酸球は莢膜を保有する野生型のC. gattiiを貪食できず殺菌できないものの、オプソニン化条件では、好酸球による殺菌作用を認めた。この現象は、好中球で観察される現象と同様であった。
当該研究領域では、種々の近交系マウスを使った検証がなされているため、本経鼻ワクチンがC57BL/6以外の近交系マウスでも感染防御効果が発揮されるか検証した。経鼻ワクチンを投与したSwiss系由来の近交系マウスでは、感染後の肺内菌数が有意に減少し、生存率も有意に改善することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 移入実験による検証でlung CD4 TRMsの重要性を明らかにすることができた。(2) 各種遺伝子欠損マウスを用いた検証を始めており、経鼻ワクチンによる感染防御機構に必要なサイトカインについても明らかになりつつある。(3) in vitroの検証で、C, gattiiに対する好酸球の殺菌活性を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 経鼻ワクチン投与群で観察される感染後の好酸球や肉芽腫応答にどのサイトカイン応答が必要なのか検証する。(2) ワクチン投与群において、好酸球の枯渇や移入が感染抵抗性に影響するかを、抗体による細胞除去または移入実験により検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、物品費、旅費、人件費の支出が想定より少なかったため。 研究の進展に伴い、各種必要経費が増加する可能性がある。主に、物品購入費、成果報告のための学会参加費・旅費などへの充当を予定している。
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