cGAS (cyclic GMP-AMP synthase) から合成されるcGAMP (cyclic GMP-AMP) は、原核細胞と真核細胞、即ち分類学上の生物界を超えてクロスキングダムな生物活性を有するセカンドメッセンジャーであることが明らかとなってきた。cGAMPは、細菌ではcGAMP結合エフェクターを活性化し、ファージ感染への防御など様々な生命現象に重要であること、また哺乳類細胞ではSTINGやRECONなどに結合してI型インターフェロン経路やNF-κB経路を活性化し、DNAに対する自然免疫応答に重要であることなどが示されてきた。本研究では、薬剤耐性化が国際的な問題となっているAcinetobacter baumanniiにおいて、超多剤耐性流行株が保持する薬剤耐性プラスミド上にコードされたcGAS様酵素に着目した。細菌cGASと薬剤耐性・病原性との関連性に焦点を置き、A. baumannii流行株にてcGAMP標的因子の網羅的同定と機能解析を行い、細菌cGASを介した生命現象の分子機構を明らかにすることを企図した。2021年度はAcinetobacter baumanniiにおいて、cGAMP標的遺伝子の欠損株、その相補株の作製を行い、野生株、cGAS欠損株、cGAS相補株のRNA-Seqによるトランスクリプトーム解析を行い、cGAMPの存在が遺伝子発現に与える影響を比較解析した。また、前年度にビオチン化3’3’-cGAMPとストレプトアビジン結合ビーズを用いたプルダウンアッセイにより同定したcGAMP特異的な標的因子に関して、精製を行い、cGAMPとの結合性を確認し、cGAMPとの結合がその活性に与える影響を検討した。
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