研究課題
A型インフルエンザウイルス(IAV)及びヒト免疫不全症候群ウイルス(HIV-1)の細胞内侵入における脱殻反応には、宿主核輸送因子トランスポーチン(TNPO1)が機能していると考えられている。TNPO1がウイルス殻を構成する因子(M1及びCA)と相互作用することで、ウイルスリボヌクレオタンパク質複合体(vRNPs)または殻の崩壊を促進している。本研究はこの複合体解析を分子レベルで行うことにより、創薬基盤となる知見を得ることを目的とした。IAVの8分節vRNPs上に存在するM1がTNPO1と相互作用し、複合体を形成すると考えられている。昆虫細胞Sf9内でHis-tagged TNPO1とIAVのM1を共発現することで、発現量の比率や分子フォールディングが細胞内の生理的な条件に近い状態で複合体を形成できると考えた。細胞抽出液の可溶性画分から大量精製を試みたが、収量は多くなかった。一部のTNPO1とM1がSDS耐性を示し、強固な複合体を形成している可能性が示唆されたが、この複合体は電子顕微鏡下で均一な分子としては観察されなかった。共発現の系はバキュロウイルスの力価を上げることが困難であったため、個々の因子を別々に発現精製する方法を検討している。TNPO1を大腸菌内で発現・精製したところ、2.7 mg/mLの濃度で大量精製が可能となった。また、鶏卵からIAVを大量精製する方法を確立しつつあり、今後この精製IAVウイルス粒子抽出液を用いてTNPO1と複合体を形成したM1タンパク質を精製、解析を開始している。HIV-1の殻を構成するキャプシドCAタンパク質のin vitroフィラメント形成条件の検討を行っており、高塩濃度下ではnative-PAGEにより高分子領域に泳動されることを確認したが、電子顕微鏡下では凝集体が観察された。現在、染色固定液等の条件検討を行っている。
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細胞
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生化学
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