研究課題/領域番号 |
20K07514
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
勝二 郁夫 神戸大学, 医学研究科, 教授 (40356241)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | C型肝炎ウイルス / 肝脂肪化 / 脂肪滴 / NS3/4A / SPG20 |
研究実績の概要 |
HCV感染患者の肝に脂肪化が発症することは臨床上よく知られ、HCV感染による脂質代謝系の変化が詳しく解析されてきた。しかし、なぜHCV感染初期に肝細胞で脂肪滴が肥大化し、肥大脂肪滴が維持されるのかの分子機構は全く分かっていない。本研究では、C型肝炎ウイルス(HCV)感染による肝細胞での脂肪滴肥大化維持の分子機構の解明を目的とする。さらにHCV感染による肝細胞での脂肪滴の肥大化を抑制する方法を開発し、肝脂肪化の抑制法とHCV増殖の抑制法の開発のための分子基盤の構築を目指す。具体的には以下の3点について解析を行う。1) 脂肪滴肥大化維持に必要なウイルス因子および宿主因子の同定、2) 脂肪滴肥大化維持に必要な分子機構の解明、3) 脂肪滴肥大化抑制法の開発。研究方法はHCV感染培養系、HCV RNAレプリコン系、プラスミド発現系を用い、HCV NS3/4Aプロテアーゼによる脂肪滴調節因子SPG20の切断とアディポフィリン(ADRP)量の変化と脂肪滴肥大化の維持の関連について解析する。さらにDAA製剤などの薬剤による脂肪滴縮小効果を解析する。 本年度の結果は以下の通りである。1. HCV J6/JFH1感染系を用いて、HCV NS3/4AプロテアーゼによるSPG20切断と脂肪滴肥大化への影響を解析した。HCV感染系により、HCV NS3/4Aプロテアーゼは宿主因子SPG20のC末端側を切断することが明らかとなった。2. NS3/4AプロテアーゼによるSPG20の切断部位を点変異体を用いて同定した。3. HCV J6/JFH1感染系を用いて、脂肪滴周囲に局在するアディポフィリンの局在を免疫蛍光法で解析した。非感染細胞に比べてHCV感染細胞では、脂肪滴周囲に局在するアディポフィリンが脂肪滴周囲に多く蓄積していることが明らかとなった。 4. アディポフィリンのユビキチン化に関与するE3リガーゼについて検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. HCV J6/JFH1感染系を用いて、HCV NS3/4AプロテアーゼによるSPG20切断と脂肪滴肥大化への影響を解析し、HCV感染系により、HCV NS3/4Aプロテアーゼは宿主因子SPG20のC末端側を切断することを明らかにした。SPG20点変異体を用いてNS3/4Aプロテアーゼによる切断部位を同定した。 2. HCV J6/JFH1感染系を用いて、脂肪滴周囲に局在するアディポフィリンの局在を免疫蛍光法で解析した。非感染細胞に比べてHCV感染細胞では、脂肪滴周囲に局在するアディポフィリンが脂肪滴周囲に多く蓄積していることを明らかにした。 以上の点から、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
アディポフィリンのユビキチン化に関与するE3リガーゼを同定する。さらにHCV NS3/4AプロテアーゼがSPG20の切断によると脂肪滴肥大化の機序を解析する。さらにHCV感染培養細胞系、レプリコン系を用いて、E3リガーゼによるアディポフィリンのユビキチン化や脂肪滴蓄積への影響を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はコロナウイルス窩の影響で予定していた国内外での学会が中止になり、旅費の使用ができずに次年度使用額が生じた。また試薬の購入が予定額より少なくかった。今年度はオンラインでの学会参加や論文投稿と試薬購入に使用することを計画している。
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