研究課題/領域番号 |
20K07517
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
門出 和精 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (70516137)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | HERV-K / SOX2 / iPS cells / retrotransposon |
研究実績の概要 |
ヒト内在性レトロウイルス(HERVs)は宿主との長い共存関係の中で本来の機能を消失し、化石化したと考えられてきた。申請者の準備研究では、Sox2で活性化したHERV-KはiPS細胞のゲノムを転移することを見出した。そこで、本研究では、HERV-Kレトロトランスポゾンスクリーニングシステム構築とHERV-K関連疾患の治療薬探索(計画1)とHERV-Kゲノム転移の簡易的検出システムの構築(計画2)を実施する。本研究成果から、HERV-Kのゲノム転移が癌や神経疾患に影響する可能性について明らかにできる。さらに、iPS細胞の安定性維持やHERV-K関連疾患の治療薬開発に繋がることが期待される。 計画1:初年度、HERV-Kレトロトランスポゾン活性を定量するためのレポーターとして発光遺伝子にイントロンを挿入することで、レトロトランスポゾン活性を間接的に定量する方法を構築することに成功した。また、コンストラクトに改良を重ねることで、HeLa細胞株でも感度良く検出することが可能となった。また、候補阻害剤として、HIV-1で承認されている治療薬がHERV-Kゲノム転移にも阻害効果を示すことがわかった。 計画2:新規HERV-Kインテグレーションサイトを次世代シークエンスで同定することができるようになったので、簡易的スクリーニングシステムを構築することを試みたが、細胞内に大量に組み込まれているHERV-Kの存在により、新規HERV-Kインテグレーションサイトの検出に関しては解決することができなかった。現在、Oxford大学と共同でSingle cell Long-read sequencingにより解決できるかを検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画1:HERV-Kレトロトランスポゾン活性を検出するための細胞株、またレポーターコンストラクトをそれぞれ確立することに成功した。サンプル間の誤差が大きいために薬剤スクリーニングとして応用することができなかったが、現行のHIV-1薬剤がHERV-Kのゲノム転移の阻害剤として利用できることがわかった。また、レトロトランスポゾン活性がSOX2発現細胞で起きていることが論文として認められた(J.Virol 2022)。前年度に発見したレトロトランスポゾン活性に、Gagに存在する核内移行シグナルが重要であることについては再現性が取れなかった。しかし、HERV-Kの転写活性化にSOX2だけでなく、他のSOX因子も関与している新規知見が得られたので、現在その詳しい機構ついて解析を続けている。 計画2:iPS細胞でのHERV-Kレトロトランスポゾンの解析については、他の実験系でも証明することができ、前年度に論文に投稿することができた(J.Virol 2022)。また、量子生命科学研究所の先生と共同研究することとなり、多検体のiPS細胞を分与いただいたため、他のiPS細胞でのHERV-Kレトロトランスポゾン活性を検討している段階であるが、解析は難航している。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画していた内容は完結し、その後の研究については難航している。そこで、推進方針を少し変更する。計画1では、HERV-Kの転写に関与する因子の同定に注目する。さらに、転写活性化したHERV-Kが、粒子を形成し、放出されるかについて電子顕微鏡にて観察を行う。 計画2については、Oxford大学と連携することで、プラットフォーム構築に尽力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在、投稿前の論文の英文校正のための予算に使用する必要がある。
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