研究課題/領域番号 |
20K07520
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
林 豪士 国立感染症研究所, ウイルス第二部, 主任研究官 (80824648)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ヒトノロウイルス / 腸管オルガノイド / 宿主因子 / 抗ウイルス活性 / CRISPR-Cas9 |
研究実績の概要 |
代表者は本研究課題において、ヒトノロウイルス(HuNoV)感染に対する宿主免疫機構の解明を目指して、in vitroにおいてHuNoVを安定的に増殖させることが可能な幹細胞由来腸管上皮オルガノイド培養系を駆使して、HuNoV感染を規定する宿主因子の同定を試みている。 前年度までに代表者は、HuNoVの腸管オルガノイドへの感染に伴い、抗ウイルス活性に中心的な役割を持つインターフェロン応答に関わる遺伝子群(パターン認識受容体、IRF転写因子、及びその下流のJAK/STATシグナル伝達経路)の発現が上昇していることを明らかとしてきた。本年度は、これら遺伝子群がHuNoV感染制御因子として働いているか検証するため、CRISPR-Cas9法を用いて関連遺伝子が欠損した腸管オルガノイドの樹立を試みた。 まず、抗ウイルス応答に主要な役割を担うJAK/STAT経路の主要な構成因子であるSTAT1遺伝子を欠損した細胞の樹立を、Cas9およびSTAT1に対するsgRNAを発現するレンチウイルスを用いて行った。Cas9及びsgRNAを導入した細胞内でのSTAT1発現をウエスタンブロットにより評価したところ、当該タンパク質の発現が消失していたことから、STAT1遺伝子が欠損した腸管オルガノイドの樹立に成功した。しかしながら、当該細胞内でのHuNoVの増殖は、親株と比較して有意な差は認められなかった。よって、JAK-STAT経路はHuNoV感染制御因子として機能していない可能性が示唆された。現在、JAK-STAT経路とは異なる作用機序で抗ウイルス活性を示すことが報告されている宿主因子を欠損した腸管オルガノイドの樹立を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までにHuNoV感染制御因子の同定にこそ至っていないものの、宿主因子解析には必須のツールであるCRISPR-Cas9法を利用した遺伝子欠損腸管オルガノイドの樹立に成功したことは、本研究課題を進めていく上で大きな成果と言えるため。
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今後の研究の推進方策 |
JAK-STAT経路とは異なる作用機序で抗ウイルス活性を示す宿主因子に関して、CRISPR-Cas9法により遺伝子ノックアウト腸管オルガノイドを作製し、樹立でき次第HuNoV増殖への影響を評価する。また、複数の宿主因子が協調してHuNoV感染・増殖を阻害(あるいは促進)する可能性を考え、複数の遺伝子(2~4遺伝子)が欠損した腸管オルガノイドの樹立が可能か試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により国内学会がオンライン開催となり旅費がかからず、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、腸管オルガノイド培養に必要な試薬(培地、成長因子など)に充てる。
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