研究課題/領域番号 |
20K07522
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
服部 真一朗 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 上級研究員 (60709484)
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研究分担者 |
安武 義晃 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (20415756)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 逆転写酵素 / HBV / HIV / 薬剤耐性変異 |
研究実績の概要 |
本研究は、HBV-RTの薬剤感受性や構造維持に関与するアミノ酸を同定、それらをHIV-RTに導入したHBVキメラHIV-RTを用い、抗HBV薬との結晶を取得、微細構造を解明し薬剤感受性との相関関係を検討、それらの結果を、新規薬剤開発へと応用することを目的とする。これまでにアミノ酸置換の組み合わせと最適化を試行し、様々なHBVキメラHIV-RTを作出、ウイルス学的・構造学的に検討をした。まず構造学的解析として、新たにデザインした4Mキメラ(Q151M/F115Y/Y116F/L74V in HIV-RT)を用いて、4位シアノ NAとの複合体結晶データを取得、微細構造を解明した。また、テノホビルとの複合体結晶化が容易ではないことから、結晶化可能なDNAアプタマーの配列最適化を進めた。その他、薬剤耐性変異を導入した3MB/M184V/F160MとdNTP複合体の構造解析を行い、耐性変異により誘導される薬剤結合ポケットの微細構造変化を捉えることに成功した。ウイルス学的解析として、新たにデザインした4Mキメラを用いて、酵素活性およびHBVキメラHIVの薬剤感受性を検討しその成果を報告した。その他、6MD (3MB+D113A/S117H)や7ME (3MB+D113A/S117H/T215H) キメラを新たに作成、薬剤感受性を検討した結果、抗HBV活性を有するテノホビルやラミブジンに対して耐性を獲得することを明らかにした。しかしながら、これらのアミノ酸変異は本来、これら薬剤に感受性であることから、HBVとHIVのRTと薬剤の結合様式あるいは耐性獲得機序の一部で異なる可能性を示唆するものであった。今後更なる薬剤RT間相互作用の詳細、薬剤耐性機構、さらには新たな薬剤のデザインに資する構造・活性相関情報の取得が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通り、3MBキメラをベースとしたさらなるアミノ酸置換の組み合わせと最適化を試行し、新たにデザインした4Mキメラ(Q151M/F115Y/Y116F/L74V)を用いて、4位シアノ NAとの複合体結晶データの取得を行った。また、テノホビルDPとの複合体結晶化が容易ではないことから、結晶化可能なDNAアプタマーの配列最適化を進めた。その他、薬剤耐性変異を導入した3MB/M184V/F160MとdNTP複合体の構造解析を行い、耐性変異により誘導される薬剤結合ポケットの微細構造変化を捉えることに成功し、これらの成果を学術誌に発表した。また、RT活性部位より遠方のアミノ酸にも着目し、6MD (3MB+D113A/S117H)や7ME (3MB+D113A/S117H/T215H)キメラを新たに作成、薬剤感受性を検討することができた。コロナ禍により、出勤制限や消耗品等の一部に納品遅延が頻発したため、薬剤耐性誘導試験や結晶構造解析の計画の一部に遅延が生じたが、総じて計画通り進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
一連のキメラRTの構造に基づいたNA-RT相互作用の詳細情報と耐性機構を基盤とし、より強力で耐性獲得を許さない新たな薬剤開発に資するため、これまで同様、以下の研究を展開する。(i) 引き続き、HBV型に最適化したキメラのデザインを行い、既存のNAに加え、4位修飾NAとの複合体解析を実施、HIV/HBV間で薬剤感受性の差異を決定づけるNA-RT相互作用の詳細、さらには薬剤耐性機構の詳細を、キメラ酵素の結晶構造構造を基盤として明らかにすることを目指す。(ii) NAとHBV-RTキメラHIVの活性・構造相関の解析としてこれまでのHBVキメラに加え、HIV-RTのモチーフアミノ酸配列をHBV型に置換する、HBV-RTモチーフキメラHIVを作成、酵素活性測定や薬剤感受性試験および薬剤耐性誘導試験を実施する。これらによって得られた成果を基に、より強力かつ耐性獲得を許さないような新規薬剤開発のために、化合物のデザイン最適化に応用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍によるリモートワークの増加による実験業務の減少に伴い、消耗品等の購入予定量を大きく下回ってしまったため物品費に残額が生じてしまった。また、参加予定であった学術集会等が中止・延期となったため旅費として計上した予算を使用できなかった。業務体制もコロナ禍以前に戻りつつあるため、次年度は、不足分の実験に注力し研究の推進を図るとともに、学術集会等に積極的に参加しこれまでに得られた成果を広く発表する。
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