研究課題
ウイルス様中空粒子(virus-like particles: VLPs)は、ウイルスの外殻タンパク質によって構築された構造体でありゲノムを持たないため感染性がない。VLPsは抗原提示細胞が取り込み易い大きさ(数十~数百nm)であり、しかも、外殻タンパク質の繰り返し構造からなるため強い免疫原性を示す。そのため、VLPsはワクチンとしての理想的な性質を備えている。しかし、ウイルスの種類によっては簡単にVLPsを作成することができない場合もある。そこで、本研究では、さまざまな発現系で発現させたVLPsに抗原となる病原性ウイルスの膜タンパク質等を高密度で付加し、種々のウイルス性疾患の予防に役立つ汎用性の高いワクチンプラットフォームの開発を目指す。本年度は大腸菌で発現させた小型球形ウイルスのVLPsにバキュロウイルス/昆虫細胞で発現させた分泌型に改変した獣医学領域で重要なウイルスの膜タンパク質を高密度で付加することに成功した。膜タンパク質がVLPsに付加していることはSDS-PAGEと透過型電子顕微鏡で確認した。このVLPs-膜タンパク質複合体をマウスに腹腔内投与したところ提示したウイルス膜タンパク質に対する極めて高い値のIgGをELISA法で検出することができた。さらに、当該ウイルスを用いた中和試験を行ったところ非常に高い中和抗体を検出することができた。本手法は、VLPsの作成が簡単には出来ないエンベロープウイルスやサイズの大きいウイルスに対するワクチンを開発する際には有望な方法であると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、小型球形ウイルスのVLPsの表面に異種ウイルスの膜タンパク質を付加し、マウスに接種する事により、極めて高い値のIgGと非常に高い中和抗体を誘導する事に成功した。
本手法の有効性が確認されたので、異なるウイルスの膜タンパク質を提示するVLPsを構築し、その免疫原性を確認する予定である。細胞性免疫の誘導についても解析を加えたい。
昨年度、茨城大学の研究分担者が予定していた実験が予想外の実験上の問題により実施できなかった。実験上のトラブルは解決できる目処が着いたので次年度に実施する予定で、予算は物品費として使用する予定である、
すべて 2021 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 備考 (1件)
Front Plant Sci
巻: 12 ページ: 717952
10.3389/fpls.2021.717952
https://www.tsukuba.ac.jp/journal/pdf/p202108231300.pdf