研究実績の概要 |
ウイルス様中空粒子(VLP)はウイルスの外殻タンパク質のみからなる構造物で免疫原性が高い。しかも、ウイルスゲノムを持たないため感染性がなく安全性が高い。VLPはワクチンの新しいプラットフォームとして期待されている。牛ウイルス性下痢ウイルス(BVDV)はエンベロープを有するプラス鎖の一本鎖RNAウイルスである。BVDVは、感染牛に急性感染を引き起こすが、妊娠牛に感染した場合、持続感染(PI)を引き起こしPI牛から出産した子牛が粘膜病を発症することが問題になっている。そこで、安全で有効な新規ワクチンの開発が望まれている。しかしながら、BVDVのVLPを生産することは困難である。そこで、我々は、魚類に感染するキジハタ神経壊死ウイルス(RGNNV)のVLPに最近、発表されたタンパク質-タンパク質共有結合システム(SpyTag/SpyCatcher)を用いてBVDVの主要な外殻タンパク質であるE2タンパク質を結合させワクチンとして利用することを考案した。BVDVのNose株(BVDV-1)あるいはKZ-91-CP株(BVDV-2)のE2タンパク質はバキュロウイルス発現系を用いて大量生産した。RGNNVのVLPは大腸菌を用いて大量生産した。BVDVのE2タンパク質とRGNNVのVLPは冷蔵庫で一晩静置して結合させた。2週間の間隔を空けてマウスに皮下接種して採血したところ、接種に用いた株と同じ株を抗原を用いた場合、ELISAで50万倍から100万倍を超える抗体値を検出することができた。また、1,000倍を超えるウイルス中和抗体値を検出することができた。この中和抗体値は現行の不活化ワクチンよりはるかに高いのでE2タンパク質結合RGNNV VLPは有望なBVDVワクチンの候補になると考えられる。
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