研究課題/領域番号 |
20K07528
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
西尾 真智子 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (70156040)
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研究分担者 |
太田 圭介 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (90625071)
松本 祐介 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (00735912) [辞退]
坂 直樹 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (80867474)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ハザラウイルス / 持続感染細胞株 / クリミア・コンゴ出血熱ウイルス |
研究実績の概要 |
クリミア・コンゴ出血熱ウイルス(CCHFV)は致死性の高い人獣共通感染症の1つで、研究にはBSL4の施設が必要であり、研究をすることが難しい。そこでヒトに病気を起こさずBSL2の研究室で扱える極めて近縁のハザラウイルス(HAZV)をCCHFVの研究を進めるためのモデルウイルスに選んだ。HAZVをSW13細胞(ヒト由来)に感染させると、速やかにアポトーシスを伴う激しい細胞傷害性を示すが、細胞によって示す細胞傷害性に違いがあることが明らかになった。また、激しい細胞傷害性を示すにも関わらず感染細胞のごく一部は生き残り、幾つかの細胞で持続感染細胞株を樹立することができた。 樹立した持続感染細胞株の中の1つは、継代を続けると細胞培養上清中よりウイルスが検出されなくなった。しかし、細胞株のcell lysateからウエスタンブロット法によりHAZVのN蛋白を検出すると、一過性感染と変わらずN蛋白が検出できた。したがって、この細胞株では、ウイルスの持続感染は継続しているが、細胞上清にウイルスが出芽できない変異が起こっていると考えられる。大変興味深い変異が入ったと考え、まずこの持続感染細胞株の解析に絞って研究を行う事にした。上清にウイルスが検出されなくなった細胞株の細胞抽出液よりウイルスの全ゲノムを検出し、塩基配列を決定した。幾つかの変異が見つかった中で、最もアミノ酸変異が多かったのはL蛋白であり、5カ所のアミノ酸変異が見つかった。これらの変異がポリメラーゼ活性に与える影響をミニゲノムの系を使って検討した。変異により活性が下がると予想したが、逆にこの変異によりポリメラーゼ活性は約10倍上昇していることが明らかになった。ここまでの研究実績をまとめ、現在論文を作成しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りに幾つかの細胞で持続感染細胞株の樹立に成功している。また、その中の1つが細胞培養上清中にウイルスが出芽できなくなる変異を起こしており、その変異箇所を同定することができた。変異の中で、L蛋白には5カ所のアミノ酸変異が見つかったので、既に構築したミニゲノム系を利用してこのアミノ酸変異がポリメラーゼ活性に与える影響を検討する事に成功した。ここ迄の点に関しては当初の計画以上に進んでいると言える。しかし、HAZVの遺伝子組換えウイルス作製は未だに成功しておらず、努力中である。この点も考慮に入れると、全体としては、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
上清中へのウイルス出芽に最も関与する蛋白はM分節より作られるG蛋白であると考えられ、G蛋白にも変異が見つかっている。しかし、G蛋白がどの様に開裂し、活性型として機能しているのかに関して全く不明な状態である。そこで、まずG蛋白の開裂部位を同定し、機能に重要であると考えられる部位を明らかにしていきたい。HAZVの遺伝子組み換えウイルス作製が確立できれば、明らかになった変異や重要であると推測される部位に変異を入れたリコンビナントウイルスを作製し、研究を進めていく計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症拡大により日本ウイルス学会学術集会が中止になり、予定していた学会発表ができなくなり、旅費等を使用しなかった。データ処理に使用していたコンピューターが不具合を起こしたため、間接経費にて購入した。 研究は持続感染細胞株の解析が順調に進み、研究の中心となったため、初年度に計画していたマイクロアレイによる解析を次年度に延期した。そのため、単純な細胞培養に係る費用が中心となったため、消耗品の使用が少ない状態となった。当該助成金と次年度の助成金を合わせて、感染細胞と非感染細胞とのマイクロアレイによる宿主因子の変化の研究に使用する計画である。
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