研究課題/領域番号 |
20K07530
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
中山 絵里 国立感染症研究所, ウイルス第一部, 主任研究官 (40645339)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ジカウイルス / 神経膠腫 / グリオーマ / ウイルス療法 / がん幹細胞 |
研究実績の概要 |
本研究では神経膠細胞が腫瘍化することで起きる神経膠腫(グリオーマ)に対してジカウイルスを用いたがんのウイルス療法を試みる。まず、ジカウイルスがマウスグリオーマ(GL261)細胞で増殖するかどうか、感染後に腫瘍細胞を傷害するかどうかを評価した。ジカウイルスMR766株またはPRVABC59株をGL261細胞に接種した後、経時的に培養上清中のウイルス力価および乳酸脱水素酵素活性を測定した。MR766とPRVABC59のGL261細胞における増殖性に差は認められなかったが、MR766感染細胞と比較してPRVABC59感染細胞で高い細胞傷害性が認められた。次に、末梢投与したジカウイルスが脳血液関門を超えて腫瘍が形成される脳実質に到達するかどうか、マウスモデルを用いて評価した。マウスにジカウイルスを末梢感染させた後、脳組織中のウイルス量を経時的に測定したところ、感染2-4日目から脳組織でウイルスが検出され、末梢から脳にウイルスが到達することが確認できた。最後に、グリオーマ幹細胞が優勢な細胞集団を得るため、腫瘍原性の強い細胞のみが選択的に増殖する条件下でGL261細胞をクローニングした。クローニングした細胞から、がん幹細胞性の指標である浮遊細胞塊を形成する細胞集団を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グリオーマ細胞に対して細胞傷害性を示すジカウイルスを選出し、末梢投与したジカウイルスが腫瘍の形成される脳内に到達することを明らかにした。また、グリオーマ幹細胞を得るためのクローニングに着手しており、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
グリオーマ幹細胞を得るためにクローニングした細胞のうち、浮遊細胞塊を形成した細胞集団ががん幹細胞の性質を持つことを幹細胞マーカーで染色して確認する。ジカウイルスがグリオーマのがん幹細胞に感染可能かどうか明らかにする。グリオーマを発症するマウスモデルに関する手技を習得する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末納品等にかかる支払いが、令和3年4月1日以降となったため。当該支出分については次年度の実支出額に計上予定であるが、令和2年度分についてはほぼ使用済みである。
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