研究課題/領域番号 |
20K07535
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
折原 芳波 東京工業大学, 生命理工学院, 准教授 (60450623)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | IBD / 炎症性腸疾患 / タイトジャンクション / 免疫 / 概日リズム |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、腸上皮細胞(Caco-2およびHT29)を用いた系での実験を進めた。 概日リズム性を刻む免疫関連分子として、タイトジャンクション関連分子であるCLAUDIN-1(CLDN1)、OCCLUDIN(OCDN)およびZO1(TJP1)に加えて、粘液構成成分であるMUC2およびMUC2およびの発現が概日リズムを刻むことを見出した。 IBD炎症様モデル下においてこれら免疫関連分子のリズム性の乱れを検証した。CLDN1はリズム性の強度をほぼ同等に保ったまま位相が前進する一方、OCDNは位相の前進に加えてリズム性強度の減弱を認めた。ZO1はリズム性強度の減弱を認めたが位相には変化がなかった。また、ムチンに関してはMUC2においてリズム性の減弱を認め、MUC3Aについてはリズム性の減弱および位相の前進とともに認めた。このことは、末梢組織の炎症によって時計遺伝子のリズムのみならず腸管免疫のリズム性にも乱れが生じていることを示唆する。 また、ヒトの腸上皮により近い系として強いタイトジャンクションを形成するCaco-2と粘液産生をするHT29を共培養する系でも同様の検証をしている。TEERが高い状態において粘液を産生する共培養系において、IBD炎症様モデルにおいて時計遺伝子および免疫関連分子のリズム性の乱れも確認している。 そこで、食品由来の外的因子を添加してリズム性への影響を確認したところ、時計遺伝子のみならず免疫関連分子についてもリズム性の回復傾向を確認し始めている。 独立基盤形成支援にてサポートいただき、マウスの明暗環境制御も限定的ではあるが可能になったことから、今後はサイトカインの発現レベル、リズム性の変化について検証し、in vivo系において外的因子摂食をさせてリズム性の乱れを回復させることで疾患の重症化抑制が可能かどうか検証を続ける。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
In vivo系からin vitro系にシフトしたことにより、昨年度は少し遅れがあったが、本年度は共培養の系も含め結果を出すことができた。独立基盤形成支援を受けてマウスの明暗環境も可能になったが、所属機関の動物実験施設改変のタイミングと重なり、なかなかスタートができなかった。限定的はあるが一部容認されたため、in vivo系もようやく開始することができ、来年度はin vivoデータも出していけることが予想できる。
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今後の研究の推進方策 |
2種の腸上皮細胞単独培養および共培養それぞれの系において、IBD様炎症による時計遺伝子および免疫関連分子のリズム性の乱れを確認した。このことから、外的因子で炎症後のリズムの回復をもう少し詳しく見ていく必要があるように思われる。また、タイトジャンクション、ムチンに加え、サイトカインの発現レベルの変化、リズム性についても検証していく。 独立基盤形成支援を受けて、in vivo系も再始動できたことから、疾患モデルの構築、外的因子摂食による影響の検証を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
In vivo系のスタートが遅れてしまっていたため、実験費用をセーブして進めた。また、コロナ禍のため、学会出張が少なかったことも一因である。 次年度は本格的にin vivo系も動き始める予定であり、本年度の未使用額はマウスの購入・維持費およびマウス実験用試薬購入費等として充足する。
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