研究課題
T細胞の老化、がん化を促進する原因遺伝子を探索するため、7週齢WTマウス、3週齢DKOマウス、7週齢DKOマウス、高齢WTマウスの腸管膜リンパ節よりCD4+ T細胞を単離し、シングルセルRNA-seqを行った。クラスター解析により遺伝子発現プロファイルから6つの集団に分類したところ、3週齢DKOおよび7週齢DKOマウスでは増殖細胞、活性化T細胞、および老化T細胞のクラスターがWTマウスに比して顕著に多く検出され、DKOマウスCD4+細胞は異常増殖活性化を示すことが確認された。また、Th17細胞のマスターレギュレーターであるRorcがDKOマウスの活性化細胞、増殖細胞クラスターにおいて高発現することが示され、DKOマウスではCD4+細胞がTh17細胞に分化し、増殖していることが示唆された。同様にTh17細胞関連遺伝子であるIl17a, Il17f, cMaf, Ahr, Il21, Il22等もDKOでの高発現が認められた。一方、Treg関連遺伝子群はDKOマウスCD4+細胞での減少は認められず、Tregへの分化が抑制されているわけではないことが示唆された。また、タモキフェン投与iDKOマウスに抗生物質投与下でAhRアゴニストI3Cを投与し、iDKOマウスではAhRを介した腸内細菌によるシグナルが病態発症に重要であることが示されたことから、この時の糞便中トリプトファン代謝物を測定した。その結果、生体内でAhRアゴニストとして働くことが報告されているIAAがDKOマウスで増加し、抗生物質投与により減少したことから、IAAによるAhRシグナルがDKOマウスにおいて病態発症に寄与する可能性が示唆された。以上の結果より、Tet欠損マウスにおいて腸内細菌依存性のトリプトファン代謝物によるAhRシグナルがTreg/Th17分化に関与する可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
今年度は作成したiDKOマウスを用いてDKO病態におけるAhRシグナルの関与が示唆されていたため、糞便中のトリプトファン代謝物の測定を行い、食物中のトリプトファンから腸内細菌により代謝され、かつAhRアゴニストとして働くことが報告されているIAAが関与する可能性を示し、DKOマウスにおける腸内細菌とAhRシグナルの関連を示した。また、WTおよびDKOマウスの腸管膜リンパ節より単離したCD4+ T 細胞を用いたシングルセルRNA-seqを行い、Treg/Th17細胞分化に関与する遺伝子群の発現解析を行った。現在はさらに詳細な解析を行い、ターゲット遺伝子の絞り込みを行っている。iDKOマウスを用いたin vitro実験系も漸く軌道に乗ったところである。よって、概ね順調に進展しているといえる。
今年度はiDKOマウスを用いたin vivo解析とシングルセルRNA-seq解析を主に行った。iDKOマウスを用いたin vitroでの実験系は漸く軌道に乗ったところで、今後はin vitroでの解析を中心にさらに詳細なメカニズム解明を目指して進めていきたいと考えている。
令和4年4月1日より千葉大学大学院薬学研究院に異動となり、令和3年度の終盤は異動準備のため実験十分に行うことができなかった。次年度に繰り越した分はマウスの移動や管理費、消耗品類に当てる予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 オープンアクセス 3件、 査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
Frontiers in immunology
巻: 12 ページ: 832293
10.3389/fimmu.2021.832293
巻: 12 ページ: 763647
10.3389/fimmu.2021.763647
巻: 12 ページ: 687669
10.3389/fimmu.2021.687669