研究課題/領域番号 |
20K07542
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
小島 直也 東海大学, 工学部, 教授 (30183338)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | オリゴマンノース被覆リポソーム / 単核貪食細胞 / Th1免疫応答 |
研究実績の概要 |
OMLによる封入抗原特異的なTh1免疫応答誘導に与えるOMLの粒子径の影響を明らかにするため、本年度は以下の項目について実施した。 1. 粒子径の異なる抗原封入オリゴマンノース被覆リポソーム(OML)を作成し、マウスに免疫後、脾臓細胞の抗原に対する応答を検討した。その結果、粒子径1000 nmおよび800 nmのOMLで免疫したマウスの脾臓細胞は抗原刺激に応答してIFN-gを産生したが、粒子系400 nm及び200 nmのOMLで免疫したマウスの細胞ではIFN-gの産生が認められなかった。また、粒子径1000 nmおよび800 nmのOMLで免疫したマウスでは抗原特異的なIgG2a抗体が優位であったのに対して、粒子系400 nmのOMLで免疫したマウスでは抗原特異的なIgG1抗体が優位であった。 2. 腹腔内常在単核貪食細胞のOMLに対する応答を検討した。粒子系600 nm以上のOMLで処理した腹腔内常在貪食細胞はTh1免疫誘導に必須のサイトカインIL-12を強く産生したが、400 nm以下の粒子系をもつOMLで処理した細胞ではIL-12の産生は認められなかった。しかしながら、400 nm以下のOMLであっても600 nmのOMLと同程度にMHC class II分子やCD86の発現増強が観察された。 以上のことから、粒子径が400 nm以下のOMLは抗原提示細胞の活性化とそれに続く抗原特異的な免疫応答の誘導はできるが、Th1免疫誘導に必須のサイトカインIL-12の産生誘導ができないため、抗原特異的なTh1免疫を誘導できないと考えられた。従って、OMLによる抗原特異的なTh1免疫応答誘導には600 nm以上の粒子径が必要であり、OMLの粒子径は免疫応答の方向性を決定する重要なファクターになっていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
糖鎖認識を起点とした貪食がTh1免疫応答誘導には重要であることを明らかにする本研究において、本年度はTh1免疫応答を特異的かつ強力に誘導できるOMLを用いて、粒子径の違いによるTh1免疫応答誘導について検討した。その結果、OMLによる抗原特異的なTh1免疫応答誘導には600 nm以上の粒子径が必要であり、OMLの粒子径は免疫応答の方向性を決定する重要なファクターになっていることが明らかになった。貪食は概ね500 nm以上の粒子をアクチン依存的に取り込む過程とされていることから、OMLの糖鎖依存的な貪食が単核貪食細胞からのIL-12の産生を誘導とその後のTh1免疫応答誘導に重要なことを示すことができたため、概ね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
申請者は乳酸菌 L. plantarum の intact cell wall (ICW)がマウス骨髄由来マクロファージ、マクロファージ様J774A1細胞などをIL-12の産生を伴って活性化することを見出している。そこで、ICWを用いて細胞壁多糖やテイコ酸を介した糖鎖依存的な貪食と活性化との関連性を検討する。具体的には、熱処理した細菌から2%SDS、プロナーゼ、ヌクレアーゼ、2%SDSによって作成したICWをさらに超音波によって破砕し細胞壁(CW)とし、これらをFITCで標識し、それらの細胞への取り込み、細胞からのサイトカインの産生などを検討する。またICWなどの形状は電子顕微鏡を用いて観察する。細胞壁多糖の活性化への影響はICWを弱酸、弱アルカリあるいはフッ化水素処理することで、細胞壁多糖を逐次除去したICWにより評価する。また物理的に破砕したCWによる応答の比較やアクチン重合阻害剤を用いた検討を行うことにより、単核貪食細胞による糖鎖依存的な貪食とTh1免疫応答誘導との関連性を明らかにしてゆく
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次年度使用額が生じた理由 |
納入金額と見積もり金額との若干の差異が生じたため、当該年度の使用額に余剰が生じた。次年度使用額2452円は、2022年度の物品費と合算して使用する
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