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2021 年度 実施状況報告書

糖鎖依存的貪食による単核貪食細胞の活性化と細胞性免疫応答誘導に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K07542
研究機関東海大学

研究代表者

小島 直也  東海大学, 工学部, 教授 (30183338)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードLiposome / Intact cell wall / mononuclear phagocyte / IL-12 / phagocytosis / actin / lactobacilli
研究実績の概要

糖鎖被覆リポソームによるTh1免疫誘導にはリポソームの粒子径が500 nm以上であることが必要であるということを明らかにした。この知見から糖鎖で覆われた粒子のモデルとしてグラム陽性菌の細胞壁に着目した。幾つかの乳酸菌(L. plantarum, L. rhamunosus, L. gasseri, L. ferumentum)から細菌の形状を保ったままの細胞壁(Intact Cell Wall; ICW)を物理的な破砕操作なしで調整し、それらICWのマクロファージ活性化能をIL-12の産生を指標として評価したところ、細胞壁テイコ酸(WTA)をもつL. plantarumのICWだけがIL-12の産生誘導能を持っていた。L. plantarumのICWに対して様々な化学的に処理することで、WTAのみを持つICW, WTA以外の多糖のみをもつICW、どちらのポリマーも持たないICWを作成して活性化能を検討したところ、ICW上のWTAの存在がIL-12の産生誘導に必須であることが確認された。
ICW上のWTAはマクロファージへの素早い取り込みにも必須であったため、次にサイトカラシンによってアクチン重合を阻害したところ、ICWの取り込みとIL-12の産生能がほぼ完全に阻害された。またICWを物理的に破砕し細菌の形状を壊した細胞壁(Disrupted Cell Wall; DCW)ではIL-12の産生誘導能は完全に失われた。しかしながら、ICWによるIL-12の産生誘導はDCWによって濃度依存的に阻害されたことから、ICWとDCWは同じ受容体によって認識されると考えられた。
以上のことから、粒子径が大きく特定の糖鎖を表面に提示した粒子をアクチン依存的に取り込むこと(phagocytosis)が、単核貪食細胞からのIL-12の産生には必要であると推察された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

3年計画の本研究において、1年目に糖鎖被覆リポソームによる細胞性免疫誘導とリポソームの粒子径との関連性を明らかにし、2年目には糖鎖で覆われた粒子としてICWによる単核貪食細胞の活性化について検討する計画を立案した。
計画どおり、1年目において糖鎖被覆リポソームによる細胞性免疫誘導には500 nm以上の粒子径が必須であることを明らかにし、単核貪食細胞によるphagocytosisの必要性を指摘した。
2年目では計画どおり乳酸菌のICWを用いた研究を遂行し、WTAをもつ乳酸菌のICWが単核貪食細胞を活性化すること、活性化には乳酸菌としての形状(大きさ)と粒子上に提示されたWTAが必要なこと、さらにはICWを粒子として認識・取り込むことによって惹起されるアクチン重合が必要であることを明らかにすることができた。
以上のことは、「糖鎖依存的貪食による単核貪食細胞の活性化」という仮説を証明するための重要な事例になると考えられる

今後の研究の推進方策

今後はなぜ粒子として認識することが単核貪食細胞の必要なのかという根源的な問題の解決に取り組みたい。前述したように、破砕された細胞壁はテイコ酸依存的に細胞に認識され取り込まれるが、アクチン重合の惹起もIL-12の産生も誘導しない。すなわち粒子として認識することが、単核貪食細胞が活性化する上で重要な意味をもつ。このことから、アクチンの動態を明らかにする必要がある。またアクチンの再構成に関わる分子の阻害剤などを用いることにより、アクチン重合と細胞内情報伝達分子との関連性についても検討する。
貪食細胞への粒子の取り込みによる活性化について、一般的にphagocytosisにより粒子が取り込まれ、その後粒子がファゴソームで分解され遊離する病原体関連分子パターンをパターン認識分子が細胞内で認識することで活性化が起こると理解されている。この場合、phagocytosisという現象が必須である。しかし、予備的な結果は、phagocytosisそのものは必須ではなく、粒子として認識することによって惹起されるアクチンの再構成が必要であることを示している。そこで、最終年度はこの点を重点的に検討して行くことにする。本研究で得られてた成果は、特に抗原提示細胞としての単核貪食細胞の活性化機構に新たな一石を投じることになると期待している

次年度使用額が生じた理由

予算執行期限までに発注できなかった物品があったため

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Importance of particle size of oligomannose-coated liposomes for induction of Th1 immunity2021

    • 著者名/発表者名
      Matsuoka Yuko、Onohara Emi、Kojima Naoya、Kuroda Yasuhiro
    • 雑誌名

      International Immunopharmacology

      巻: 99 ページ: 108068~108068

    • DOI

      10.1016/j.intimp.2021.108068

    • 査読あり
  • [学会発表] Lactobacillus plantarumの細胞壁テイコ酸に依存したファゴサイトーシスによるマクロファージの活性化2021

    • 著者名/発表者名
      細川 伸、小島匠平、横田伸一、小島直也、黒田泰弘
    • 学会等名
      日本糖質学会年会
  • [学会発表] OMLによる細胞性免疫誘導には糖鎖依存的なファゴサイトーシスによるOMLの取り込みが必要である2021

    • 著者名/発表者名
      小野原えみ、松岡祐子、小島直也、黒田泰弘
    • 学会等名
      第94回日本生化学会大会,
  • [学会発表] Lactobacillus plantarumの細胞壁テイコ酸に依存したファゴサイトーシスによるマクロファージの活性化2021

    • 著者名/発表者名
      細川 伸、小島匠平、横田伸一、小島直也、黒田泰弘
    • 学会等名
      第94回日本生化学会大会
  • [学会発表] Induction of IL-12 from murine macrophages by intact particulate cell wall of Lactobacillus plantarum through cell wall teichoic acid-dependent phagocytosis2021

    • 著者名/発表者名
      Shin Hosokawa, Naoya Kojima
    • 学会等名
      The 50th Annual Meeting of the Japanese Society for Immunology
  • [学会発表] Carbohydrate dependent phagocytosis of oligomannose-coated liposomes induces IL-12 production from mononuclear phagocytes2021

    • 著者名/発表者名
      Naoya Kojima, Yuko Matsuoka, Yasuhiro Kuroda
    • 学会等名
      16th International Meeting of Endotoxin and Innate Immunity Society
    • 国際学会

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公開日: 2022-12-28  

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