研究課題/領域番号 |
20K07544
|
研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
中平 雅清 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (60454758)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | IL-18 / IL-22 / 気道炎症 / Th1細胞 / Th17細胞 / 加齢 |
研究実績の概要 |
抗原 (OVA) + CFAによって能動免疫したマウスではOVA+IL-18の点鼻刺激によって気道炎症が惹起されるが、CFAはTh1だけでなくTh17応答も誘導する。そこで、in vitroで分化させたOVA特異的Th1/17細胞をマウスに移入する系 (受動免疫) を用いて、IL-18誘導性気道炎症惹起へのTh1、Th17細胞の寄与を検証した。OVA特異的Th1細胞移入マウスにOVA+IL-18点鼻を行うと、OVA単独点鼻時に比し、好中球、好酸球の気道浸潤、肺組織の炎症増大と軽微な肺出血が確認された。すなわち、Th1細胞がIL-18に反応して気道炎症を惹起することが示された。 IL-18刺激によってTh1細胞からはIFN-γに加えてIL-13やIL-22も産生されるが、Th17細胞のIL-18応答性やIL-18刺激のTh17サイトカイン産生への影響は不明であった。In vitro誘導細胞を用いた実験で、分化回数を重ねるとIL-18受容体発現が上昇しTh17細胞はIL-18反応性を獲得すること、IL-18刺激によってIL-17、IL-22産生が増大することを確認した。また、OVA特異的Th17細胞を移入したマウスにOVA+IL-18点鼻を行うと、気道への好中球浸潤や肺組織の炎症増大が見られたことから、 Th1細胞同様、Th17細胞のIL-18誘導性気道炎症への寄与も示された。 次に、加齢による内在性IL-18産生の増大が気道炎症の惹起に寄与するか検討した。マウスでは加齢に伴い血清IL-18値が上昇していることが確認され、OVA特異的Th1細胞を移入した3月齢と15月齢のマウスにOVA単独点鼻を行うと、15月齢のマウスでは3月齢に比し好中球、好酸球の気道浸潤増大が確認された。すなわち、内在性IL-18が高い環境にある高齢マウスではTh1型気道炎症が起こりやすいことが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CFAを用いた能動免疫の系は、Th細胞種の違いに起因した気道炎症の差異を厳密に検討することが困難であり、又、ナイーヴCD4陽性T細胞数に違いがある若齢、高齢マウスの比較には適しない。そこで、2021年度はまず、in vitro誘導OVA特異的Th細胞をマウスに移入する受動免疫の系とこれに合わせた点鼻条件の確立を行なった。 in vitroで分化誘導したTh17細胞のIL-18反応性の解析とOVA+IL-18点鼻したOVA特異的Th1/17細胞移入マウスの解析から、能動免疫系で観察されたIL-18誘導性気道炎症は受動免疫の系でも再現できること、又、この気道炎症の誘導にはTh1細胞だけでなくTh17細胞も寄与しうることがわかった。肺組織の保護作用を示すIL-22がIL-18刺激されたTh細胞由来なのかそれとも別の細胞由来なのかを検討する実験は未実施の状況にあるが、上記のように受動免疫を用いた気道炎症の誘導条件が確立され、この系におけるTh細胞の挙動も明らかになったことから、今後問題なく実施可能であるといえる。 加齢によるIL-18の影響については、若齢と高齢 (2年齢) のマウスで肺組織中の全 IL-18量に差は見られなかったものの、加齢の進行に伴い血清IL-18値の上昇を確認できたことから、今後の研究遂行に必要な、高齢マウスにおける内在性IL-18の増大という前提条件を得られたと考えている。また、3月齢と15月齢のマウスにOVA特異的Th1細胞を移入しOVA単独で点鼻刺激を行なったところ、15月齢のマウスでは3月齢に比し気道への好中球、好酸球浸潤の増大を確認できた。以上のことから、加齢による内在性IL-18産生の増大がTh1型気道炎症を惹起しうることを示すデータが得られたと考えられるが、さらに加齢を重ねたマウスで気道炎症の程度がさらに増大していることを今後確認していく必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
能動免疫したIL-22欠損マウスの解析から、IL-18誘導性気道炎症ではIL-22が肺組織の保護に重要であることが明らかにしているが、肺組織保護に寄与するIL-22がIL-18刺激されたTh細胞由来なのか、それともそれ以外の細胞に由来するのかまだ明らかになっていない。そこでまず、受動免疫による気道炎症の系でもIL-22が肺組織保護に重要であることを検証するために、OVA特異的Th1/17細胞移入マウスの気道炎症誘導時に抗IL-22中和抗体の同時投与を行い、能動免疫したIL-22欠損マウスと同様の病態 (血性BALFの回収や肺出血像等) が観察されるか検討する。次に、in vitroで分化させた野生型とIL-22欠損のOVA特異的Th1/17細胞をIL-22欠損マウスに移入し、OVA+IL-18の経鼻投与による気道炎症の病態評価を行うことで、肺組織の保護に寄与するIL-22を産生する細胞が移入したTh細胞かどうか明らかにする。そのIL-22産生細胞が移入したTh細胞でない場合、ILC3等の他のIL-22産生細胞に焦点を当てて実験を実施する。 加齢とIL-18誘導性気道炎症に関する研究に関しては、15月齢のマウスの解析から、加齢による内在性IL-18産生の増大がTh1型気道炎症を惹起しうることを示す知見を得ている。今後、さらに加齢を重ねたマウスでも確認していく予定である。 上記実験と並行して、IL-22 による肺組織保護機構も明らかにする。具体的には、気道炎症を誘導した肺組織のサンプルを用いてIL-22欠損の有無で生じる遺伝子発現レベルの差を網羅的発現解析によって測定し、IL-22の肺組織保護作用に寄与する遺伝子を同定する。次に、同定遺伝子からリコンビナントタンパクを作製し気道炎症を惹起したIL-22欠損マウスへ投与することで、IL-22投与時と同様の効果が得られるか検討する。
|