研究課題
2021年度では、マウス腸管のパイエル板およびLamina propriaよりIgA+形質細胞をセルソーターで分離し、シングルセルRNAシークエンスによる抗体遺伝子の重鎖(HC)と軽鎖(LC)の配列決定と遺伝子発現の解析を行った。その結果、56個のIgA+形質細胞のうち、実に55個がB-1細胞由来であることが判明した。即ち、定常状態の腸管においては、主にInnate IgAが腸管のホメオスタシス維持に関わっていることが示唆された。現在、炎症状態におけるIgAの由来について解析を進めている。また、MZB1欠損マウスにおける腸管炎症の亢進により、大腸がんの発生が促進されるかどうかについて、炎症誘発性大腸がんモデルを用いて検証した。その結果、野生型マウスに比べ、MZB1欠損マウスでは、誘発される腫瘍の数が多く、サイズも顕著に大きくなっていた。野生型マウスに比べ、MZB1欠損マウでは、脾臓は肥大していたが、血中の各種抗体価は増加していなかった。さらに、脾臓とパイエル板における胚中心B細胞、マクロファージおよび好中球の割合も変わらなかった。興味深いことに、野生型マウスに比べ、MZB1欠損マウスでは、Lamina propriaにおけるマクロファージや好中球の割合が顕著に増加するとともに、TNFα、IL-6及びIL1βなどの炎症性サイトカインの産生が有意に増加していた。即ち、MZB1は炎症による大腸がんの発生を抑制する役割を果たしていることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
コロナによる影響はあったものの、予定していた実験が概ね遂行できた。
2022年度では、年度別研究計画に沿って実験を実施する予定。さらに、これまでに得られたデータを総括し、論文をまとめる。
令和3年度中に研究費の前倒し請求をしたが、コロナ第6波の感染広がりなどにより、前倒し請求した研究費が使用できなかった。これらの研究費は令和4年度の研究計画に沿って使用する予定である。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
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