前年度までの研究により、分子シャペロンMZB1は、腸管へのIgA分泌を促進することにより、腸炎や大腸がんの発生を抑制することを明らかにした。2022年度では、腸管IgAが果たす役割をより明確にするために、IgA欠損マウスを用いて検証した。その結果、MZB1欠損マウス同様、IgA欠損マウスにおいてもDSSにより誘発される腸炎が重症化していた。即ち、腸管IgAが炎症性腸炎の抑制に重要であることを明確にした。さらに、MZB1欠損による腸炎の悪化が腸内細菌の変化によるものかどうかを明らかにするために、野生型マウスとMZB1欠損マウスを生後8日から同じケージで飼育し、8週齢後DSS誘発腸炎を比較したところ、腸炎の重症化程度に差が見られなかった。即ち、MZB1は腸管へのIgA分泌を促進することにより腸内細菌の多様性とバランスの維持を制御することで、腸炎を抑制することが明らかになった。
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